してあったということですね。水島 例えば実際には住んでいない投資用マンション、リゾートマンションであったりとかですね、なかなか自分たちで運営するのが難しいので、管理会社が実務上の運用、慣習でこのケースが取ってきています。正直、歴史としては結構長いんですが、ルールも非常に曖昧な中でやっていたという感じです。佐藤 そうすると、話題になったのはこの数年ですが、現場の中ではずっと前から実態としてあったわけですか?水島 当時私が勤めた会社は、比較的に、第三者管理を積極的にやっていましたが、元々の発端は投資用のワンルームマンションでした。 第三者管理の良さは、理事会がないので、集まらなくていいんですよね。理事会で集まらなくていいということはフロント担当者の事務手間が非常に減るということで、理事会のあるファミリータイプのマンションと比べると、安価な管理委託費の設定にしていました。 ただし現場に行かなくてよい分、フロント担当者は物件数をより多く持たされまして、逆に電話での問い合わせなどが多くなって、第三者管理専門のフロントは机にへばりついて電話対応をしていました。 フロント担当者の物件を増やせるという管理会社の考えには少し合致したと思っています。佐藤 マンション管理の現場で理事のなり手不足や、あるいは管理不全ということがあって、管理会社としては実務的にも第三者管理にしたほうが実務を取り仕切ることができる。法律や国の指針によって「この方式をやるべし」としたものではないところが重要なところですね。一番の問題点は「利益相反」佐藤 さて、ここからは現在の第三者管理の実情について、さらに深掘りをしていきます。この第三者管理については、何が一番の問題点だと思われますか?水島 やはり利益相反のところだと思います。 管理会社が管理者になるということは、契約のおける甲乙が一緒。発注者と受注者が一緒ということになりますよね。 私は相談会などでもよく言っているのですけど、管理会社は管理組合の懐事情を知ってるんです。また、長期修繕計画の作成を行いますので、いつどのタイミングで工事をする、いつどのタイミングでこれぐらい貯まっているというのが、すべてわかってしまう立場なんです。 なので、やっぱり印鑑その他あれば、いくらでも決済ができます。佐藤 マンションの修繕というものは、予防保全を第一とする考え方を持っています。 例えば、水が漏れてから直すのでは、ひとつ屋根の下に住む者同士で被害者と加害者が生じかねません。だから一定の経過年数が来れば、早めに防水をしたほうが好ましい、予防保全的に直そうと。 とは言いながら、じゃ予防保全の範囲がどこまで善意に解釈できるのか―今やらなければならないものなのか、実は先延ばしでもいいのではなかという保全を一緒くたにやってしまっているのではないかというところは、非常に難しいです。 管理をする上で早めに手を打ちましたといえば、それはそれで正しい行為だと主張できますし、一方お金を使われた側の視点から見れば早いんじゃないか、あるいはその業者じゃなくても工事ができたんじゃないかというお話も出てきます。 契約上、利益相反が疑わしいとなったとして、しかしそれは民々の契約なんで当事者同士の話し合いの中で立証が必要だったり、契約違反じゃないかという話になれば管理組合と管理会社の中で争って解決せざるを得ない話になってきます。 これはこれで非常に管理組合さんとしてエネルギーを使うことで、そもそも使えるエネルギーがあれば第三者管理ではしてないよという話に返っちゃう。 ちなみに、こうしたトラブルを未然に予防するような管理契約のひな型みたいなものはあるのですか?水島 国のほうで今、ガイドラインを作成中するという話になっていますが、現状は契約をしている管理会社の、いわゆる社内規定によるもので、トラブル予防などは正直ないですね。-3 - 管理会社の人材不足、組合側の世代交代佐藤 これまで第三者管理方式について管理組合側の立場で話をしてきましたが、逆に管理会社側のメリットについては、どのようにお考えでしょうか。水島 どこの業界も人材不足です。マンション管理業は人の手による仕事量が多い、まさに労働集約型産業ですから、もろに人材不足のあおりを受けています。 マンション数が増えていくものの人は減っているということになると、一人のフロント担当者をどう効率的に働かせるかということになってきます。 では、経営者からみると、フロントの仕事の何が問題なのか。 それは、集ま(め)ること、行くことなんです。理事会がある、総会がある、各種打ち合わせがある、じゃ現場に行かないといけない。電車に乗って1時間移動だ。 管理会社が管理者となって管理をすれば、管理会社のジャッジで物事が動いていくということになり、管理会社も非常に動きやすくなるわけです。佐藤 マンション管理適正化法ができて、これまで管理会社は何でも言うことを聞かなければいけない。「管理組合はお客様です」とやってきた。 その感覚で来られると、そろそろミスマッチが生じてきたということでしょうか。水島 管理契約のひな型となる「マンション標準管理委託契約書」が改訂され、カスタマーハラスメント(カスハラ)対応ではどんな行為が対象となるかを例示されました。 管理会社側もあまりに過度な要求だったり、中にはクレームと取れるようなものに関しては対応をお断りするケースも出てきています。あとは、やはりマンションの築年が古くなればなるほど、規模が大きくなればなるほど、このジャッジ、判断に専門性が求められます。 私はこれを管理の高度化・複雑化と申していますけれど、そうしたところで、プロの力を借りるということがどんどん必要になってくる側面もあると思います。佐藤 管理組合のほうでも人材不足~理事のなり手不足と言われていますね。ただ「できるんだけどやりたくない」人が増えているという実態があるとみえるのですが、現場を見ている立場の水島理事からはどうみえますか。水島 高齢化ということで、住んでいる人が現役世代より上の世代が多く、そちらの意見が勝ってしまうんですね。 私の知る大きなマンションの事例ですが、総会でいつも過去の役員たちからいろいろクレームをつけられるんです。 輪番だからといって役員やりたくないですよね。そういう現役世代が潜在的に非常に多くいらっしゃるかと思います。佐藤 この隙をつく、という言い回しも適当ではないかもしれませんけれども、この中で第三者管理方式という仕組みがあった場合に、それをうまく使うことによって建物の維持管理の分断は途切れ目なく進めることができるんじゃないかという見方もあるのかなと思います。水島 管理会社も正直できないものはできないと断る、逆に管理組合も管理会社はこうやってお金儲けしているんだなど、管理の質が見えてきています。 このまま10年先、20年先、今のビジネスモデルが通用するとは思えません。私としてはですね、双方の意見をうまく取り入れながら新しい管理のモデルを作り上げていけたらな、という風には思っています。 〈 編集部=次号「後編」では、統計上の数字から管理組合や区分所有者の意識、さらには求められる管理方式のあり方などについて掲載する予定です〉
元のページ ../index.html#3