大規模修繕工事新聞24年1月号(No.169)
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 一般社団法人全国建物調査診断センターが随時開催している管理組合オンラインセミナーの一部を紙上採録します。今回は12月24日にVimeoで公開した第67回セミナー「第三者管理時代、リスクマネジメントは大丈夫ですか!?」の前編です。今号で管理者の権限、利益相反、人材不足等について取り上げます。 過去のセミナーはVimeoにより動画配信を行っています。全建センターホームページからご視聴ください。れている全国建物調査診断センターの水島理事とともに、「第三者管理時代、リスクマネジメントは大丈夫ですか!?」ということでディスカッションしてまいりたいと思います。水島 私自身は元々、管理会社の勤務経験がありまして、今回のテーマである第三者管理制度について積極的に取りを組んだ会社にも属しておりました。 現在はマンション管理士の立場で管理組合様にコンサルティングを行ったり、こういったセミナーを通じて様々な情報発信をさせていただいております。 本日は、私なりに第三者管理制度について調べたこと、過去の経験等から説明させていただきたいと思います佐藤 「第三者管理方式」ですが、そもそもどのような制度なのか、改めてその定義などをご説明お願いできますか。水島 第三者管理、簡単に言えば第三者が管理することということですが、区分所有法上の管理者を第三者がするということは、簡単に言うと、区分所有者以外の人が管理者になるということです。 マンション標準管理規約では、この第三者管理とも取れる3つのパターンが示されています。 この中で今回、様々な問題を指摘されているのが③外部管理者総会監督型です。 こちらが①②と比べて違うのが、そもそも理事会を置かないというもので、基本的に管理者がすべてのものを決定し、区分所有者が意見発信できるのは総会のみということになります。このため、区分所有者の権利が損なわれているんじゃないのかということなのですが、この形態が実は一番今、世の中に出ているものであります。佐藤 ご視聴のみなさまもびっくりなされたかと思いますが、理事長を置かない、理事会そのものを廃止する。その代わりに区分所有者ではない第三者~個人であっても法人であってもよいのですが、そのようなものが管理組合に入ってくるという仕組みですね。 ただ、理事長という言葉は聞くけど、管理者って、あれ何だろう?と思う方がいるかもしれません。 管理者とは、そこの団体の管理の責任者です。マンションでは理事長が管理者に当たるケースが一般的で、民法上の善管注意義務を伴う役割と団体(管理組合)の長であるという二つの性格があるとお考えください。 すなわち、この管理者の役割だけをまったく第三者のプロに持っていっちゃうという仕組みです。はじめに佐藤 本日テーマの「第三者管理方式」ですけれども、国土交通省におきましては、建物の高経年化や居住者の高齢化の「2つの老い」に伴う様々な課題について、今後進めるべき政策を検討する「今後のマンション政策のあり方に関する検討会」が8月にとりまとめを公表しました。 このとりまとめに示された施策の方向性にもとづき、10月よりマンション管理における「外部専門家の活用ガイドライン」の整備等について検討する 「外部専門家等の活用のあり方に関するワーキンググループ」を立ち上げ、議論を行いつつあるという状況であります。 実際のところ、理事のなり手不足等から第三者管理方式を委ねようというようなケースは潜在的にも多いと言われており、修繕工事の受発注を一手に行うというところから、いわゆる利益相反をはじめとした管理組合側の不必要な負担が増えるのではないかと、こうした懸念等についてもクローズアップされて報じられている事実があります。 一方、マンションの投資目的所有につきましては、区分所有者が居住するという実態がありませんので、いわゆる理事会活動に対して後ろ向きであることも予想されており、様々な問題を解決すると言われているのが、第三者管理方式です。 いずれにしても第三者管理方式は様々な問題が指摘されています。本日はこうした内容等について解説を加えて参ります。「第三者管理方式」とは?佐藤 それでは、本日は管理組合の立場で現場に徹して活動をさ管理者の権限が大きくなる水島 佐藤理事の言うとおり、管理者には善管注意義務が発生するということで、権限がかなり大きくなります。 例えば、工事の発注であったり、印鑑・通帳の保管などですね。各種契約の締結が、管理者の決裁で決まりますから、第三者管理方式を用いた場合、管理者がどこまで何をしていいのかというところがまだまだ曖昧な部分となっています。 今は、実際に受けている管理者の判断であって、どちらかというと法律よりは実務上の運用、慣習の方が勝っているんじゃないかなとなってます。佐藤 法律や仕組みの中で管理者の形態が新しく出てきたのではなく、現場でのいろいろな管理不全を背景にして、管理会社がこのような管理の方式を取ったのがはじまりであって、実務上の運用・慣習ということは以前からこの第三者管理方式は実態と-2 -

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