大規模修繕工事新聞23年6月号(No.162)
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■メインシンポジウムまとめ鎌野邦樹・早稲田大学法科大学院教授 マンションの住戸の管理は各区分所有者が行い、共用部分や敷地等の管理は管理組合が団体的に行う。その限りではマンションは「社会的資産」ではない。 ただ、マンションは、区分所有者の「生活基盤」であり、「最も重要な財産」であるとともに、「都市ないし地域の重要な構成要素」である。会長 鈴木克彦・京都橘大学教授 2021年9月に公表されたマンション管理適正化指針において、マンションを「社会的資産」と位置づけているのは、マンションという居住形態が区分所有者等自らの居住環境の質確保だけにとどまらず、周辺の住環境や都市環境にも影響を与えるものであり、都市景観の形成や地域コミュニティの醸成、地域防災性能の向上といった役割をも担っていることを意味している。 「社会的資産としての資産価値」を保全するためのマンションの再生・長寿命化を視野に入れた取り組みが大切であることをあらためて認識する必要がある。 メインシンポジウムでは、単なる資産保全のための再生・長寿命化論だけでなく、「社会的資産」となりうるようなマンション像を視野に入れ、地域社会との共生やコミュニティの再生といった多様な課題を包摂した持続型社会に向けての「再生」「長寿命化」について幅広く議論したい。 「再生」の手法については、建替え・敷地売却だけにとどまらずに、スケルトン状態での解消や用途変更といった課題も視野に入れた議論に期待する。メインシンポジウムの会場60周年記念館記念ホール・大セミナー室5.「 高経年マンションの流通におけるファイナンスの影響力―京町家のファイナンスの経験を踏まえて」/西村孝平・株式会社八清取締役会長 区分所有者の利益の維持が、地域の利益につながり、その規模からしてマンションの「適正管理」「適正改修(変更)」「適正建替え」「適正解消」は、地域社会に大きな影響を及ぼすから、地域にとってもこれらが強く求められる。 もちろんマンションが「社会的資産」になることが望ましい。だから、どうやって「社会的資産」にすべきかという問題だと思う。 最終的にはやはりコミュニティなしには、実際には合意形成が難しい。建て替え、解消だけではなく、管理や変更でもコミュニティが基盤になる。 実は、コミュニティをどうやって作り上げていくかは、区分所有法改正では限界があり、できない。せいぜい「区分所有者の責務」を設けるぐらいしか法はできない。 マンションのメインルートは、適正管理、適正変更、災害などがあった場合には適正復旧、そして長寿命化を得て、最後は適正解消となろう。 そして、サブルートで「1棟リノベーション」または「建替え」の選択肢がある。 現在、審議が進行している区分所有法改正においても、このような流れの中で各制度が円滑に機能することが求められる。-2 -  一般社団法人日本マンション学会は4月22日、23日、京都市左京区の京都工芸繊維大学で4年ぶりに通常の対面式にて京都大会を開きました。 22日のメインシンポジウムのテーマは「社会的資産としてのマンション再生・長寿命化への道すじ」。社会資産となりうるようなマンション像を視野に入れ、地域社会との共生やコミュニティづくりといった課題も含めた「再生」「長寿命化」に向けての処方策について議論が行われました。■大会趣旨説明(要約)■メインシンポジウム概要1.「 マンションの長寿命化に向けた取り組み(ビデオ上映)」/故小林秀樹・千葉大学名誉教授2.「 旧耐震基準の区分所有マンションの耐震改修に向けて」/西澤英和・関西大学名誉教授3.「 京都市におけるマンション管理の適正化に向けた取り組み―管理不全対策と管理状況が評価される環境整備」/神谷宗宏・京都市都市住宅政策課企画担当課長4.「 マンション再生に向けた法制度の経緯と展望」/折田泰宏・弁護士

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