大規模修繕工事新聞23年1月号(No.157)
13/65

【問題の所在】 変更の特別決議は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成を得ることは必ずしも容易ではなく、必要な工事を実施することができないケースや、合意形成に長期間を要するケースがあるとの指摘がある。そこで、少数反対者の利益にも留意しつつ、何らかの方法で変更の特別決議の要件を緩和することについて検討する。【A案】 多数決の割合を区分所有者及び議決権の「3分の2以上」に単純に引き下げるものとする。 工事中の共用部分の使用の制限や費用負担等の面で区分所有者に大きな影響を与えることを踏まえて、相当多数の区分所有者の賛成を確保する観点から、多数決割合を3分の2以上とする。【B案】 次の客観的事由がある場合には、多数決の割合を区分所有 区分所有法制研究会が令和4年9月にまとめた研究報告書「第2 区分所有建物の管理の円滑化を図る方策」から、「3 共用部分の変更決議の多数決要件の緩和」を紹介します。者及び議決権の「過半数」「3分の2以上」に引き下げるものとする。ア  区分所有建物が建築完了時から相当の長期間が経過したものとして法令で定める一定の年数を経過したことイ  区分所有建物が㋐火災に対する安全性に係る建築基準法等に適合していない、㋑外壁、外装材等が剝離し、周辺に危害を生ずるおそれがある、㋒配管設備の損傷、腐食により著しく衛生上有害となるおそれがある、㋓建築物移動等円滑化基準に適合していないと認められることウ  区分所有建物が政令で指定された災害により大規模一部滅失をしたこと【C案】 区分所有者の定数だけでなく、議決権についても規約で「過半数」まで減ずることができるものとする。 頭数要件と同様に、議決権要件についても、規約で議決権の過半数まで低減させることを可能とする。【注釈】 【A案】【B案】【C案】は、相互に排他的なものではなく、両立し得る。また、所在等不明共有者を変更の特別決議の母数から除外する仕組みや、出席者の多数決により変更の特別決議を可能とする仕組みは、変更の特別決議の円滑化という観点からも重要であるため、この観点から引き続き検討すべきである。-13 -

元のページ  ../index.html#13

このブックを見る