大規模修繕工事新聞22年10月号(No.154)
3/61

パレットの隙間を塞ぐことになり、地下空間に湿気が溜りやすくなり、錆の進行が早まり、カビ・害虫発生のリスクが高まることにつながっています。上記のマンションにおいて、設置されている機械式駐車場をこのまま使用した場合を、平均額をもとにシミュレーションしたいと思います。 まず、定期点検費と修繕費用の15台分合計が年間144万円かかります。15年目は年間144万円に加え、部品交換・修繕費用300万円で、444万円の支出になります。  収入は1台当たり月額1.2万円なので、全15台のうち9台分の年間129.6万円が計上されています。使用料129.6万円から定期点検費等の144万円を差し引くと、それだけで毎年14.4万円の赤字です。空き6台分の使用料が入ってこないことが赤字の原因です。 来年が15年目なので保守・点検会社からの最低限の部品交換に300万円必要だと提示されています。 このままでは築30年目で累計約560万円の赤字、これに25年目の新規更新費として115.0万円/台×15台分=1,725万円を加えれば、築40年時では累計約2,716万円の赤字になる計算に見込みです。-3 - 空き問題の解決策 まず駐車場の空きによって、赤字が蓄積し続ける現状というものがあります。 これは、リセールバリューの価値低下ということになってきますが、価値を低下させないためには「適正な台数」の駐車場にする必要があります。 この問題を解決するには、減築しかない―すなわち修繕費用のかかる機械式駐車場の台数を減らすことしかないことになります。 では、「適正な台数」とは何かと考えますと、現状の必要台数なのか、将来的な空きを想定した必要台数なのかといった問題になります。 敷地に余裕があれば、自走式に変更ということも考えられますが、広大な敷地面積や膨大な建築費が必要なことから、多くのマンションではあまり現実的ではありません。 解決策としては、減築しかないことにつきると考えられます。機械式駐車場の解体決断へ 機械式駐車場というのは管理組合の財産ですから、それを減築(解体)することは財産の喪失に当たります。 そのために事前の準備として、例えば住民アンケート(マンション駐車場あるいは外部駐車場の利用状況、使用料の相場、解体し平置き化した後の希望する用途=駐輪場の増設や倉庫の新設など)をとることが必要になってきます。 また、空き状況については、10年、20年遡って、どういった推移をしていったかをわかりやすく見える化して、将来的な予測を見立てる推移表というものを用意することも大切です。15年目に機械式を一部平面化 次に15年目に機械式駐車場を一部解体し、平面化するとどうなるかといったシミュレーションをします。 15年目の部品交換・修繕費用は6台分のみの150万円とし、5基のうち3基分の機械式を解体して平面化し、3台分とする工事に400万円計上します。 駐車場は機械式6台、平面3台の計9台に変更となり、今後は定期点検費と修繕費用が機械式6台分(年間57.6万円)の支出でいいことになります。 とはいえ、また空きが出ることを予測し、シミュレーションでは30年目の契約台数を2台減らした7台としました。ですが、年間に支出が6台分57.6万円に減っているので、契約台数7台分の使用料100.8万円-57.6万円=年間43.2万円が黒字として計上されていきます。 このため、築40年時に6台分の新規更新費をかけても、累計で315万円の黒字になります。赤字を避けた状態が続くことになります。

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る