大規模修繕工事新聞22年9月号(No.153)
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 これによって漏水を引き起こさないという特徴になります。 また、積層によるもうひとつのメリットは、上層で雨水の浸入があったとしても下層でそれを食い止めることによって、建築の内側への漏水を防ぐことができることです。これは単層のシート防水では難しいものです。フィング同士の層間を埋めるといった施工ができます。これによって雨水が浸入する部分を遮断して、高い水密性を保持できます。 これがシート防水では、隙間を埋める液体がないため、空隙(くうげき)が発生し、水密性はどうしてもアスファルト防水にはかなわないということになります。■「均質な厚み」 この特徴は「定形材料」です。溶融アスファルトとは異なり、アスファルトルーフィングは工場で製造されたものを、そのまま現場で広げて貼っていきます。このため、工場で製造された、安定した一定の厚みを確保することができます。 塗膜防水と比較すると、塗膜防水は溶融アスファルトと同じように躯体の凹凸に馴染んで隙間を埋めるように高い水密性を発揮しますが、凹凸の凸の部分に関しても形どおりになってしまうため、その部分の防水層が薄くなってしまう恐れがあります。 また、塗膜材を現場で作業員が自分でまいて施工するので、防水層の厚みが現場施工の品質に委ねられ、下地の凹凸により厚みに差が生まれることになります。 その意味で、工場で製造された均質な厚みを持つアスファルト防水は、安心・安定した厚みのある防水であるといえます。-5 - ■「実績」 そもそもアスファルトという素材は紀元前から防水材や接着剤として使われてきたといいます。使われていたのは、自然に発生している天然アスファルトでした。 1800年代後期からは、アメリカで石油から製造されるアスファルトを用いて防水材として使われました。日本においては平らな屋根が輸入された1900年代からで、1905年大阪瓦斯本社ビルを皮切りに、その後多くの主要な屋根で採用されました。■「耐久性」 アスファルト防水は、数ある防水工法の中で唯一、積層ができるものです。積層することで防水に厚みが増します。 下図のように、落下物を落とす試験で、防水層に刺激を与えた際に、単層の防水層であれば簡単に下地まで穴が空いてしまいます。しかし、積層して厚みがあれば、表層は損傷しつつも下地までは傷がつきません。■「水密性」 ドロドロに溶けた溶融アスファルトを巻いて施工していくため、「不定形材料」となり、例えば躯体の凹凸の隙間やアスファルトルー

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