大規模修繕工事新聞22年8月号(No.152)
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 管理会社が管理組合理事長に代わって管理組合のトップである「管理者」に就任するケースが増えているという。委託する者と受託する者が同一になるわけだ。こんなことで管理組合の財産や運営が大丈夫だろうか。 管理会社にとって、都合のいい管理運営が何の制約もなく可能になる、まことに「おいしい」業務である。任せたら戻れない。 メリットとしてこれらの管理会社は、①身体的負担の軽減、②トラブル時の適正判断、③遠慮なく要求・指摘できる、などをあげている。 しかし、これはおかしい。 ①では負担が軽減する代わりに権限が全くなくなる、②と③では当事者同士の「話し合い」から第三者への「お願い」になり、本当に組合員のための解決ができるかは極めて疑問である。 さらに重大なのは、いったんこの「管理会社=第三者管理者」のシステムにはいってしまうと、元の理事会体制に戻すことが、きわめて困難だということである。 区分所有法は確か、組合員(および議決権)の5分の1以上の賛成での総会を開く手続を行って議決するというシステムはあるが、実際にこの制度はわずかしか使われていない。 この制度の利用に取り組んでみればわかるが、関心の高い活発な活動をしている管理組合でさえも成立させるのは中々大変な事業である。 いったん管理会社に管理者を任せたら元へは戻れず、管理会社の利益優先で、勝手放題な運営になるのは必至である。もし導入の動きがあれば慎重な検討をお願いしたい。 (NPO日住協論説委員会)NPO法人日本住宅管理組合協議会/集合住宅管理新聞『アメニティ』2022年7月5日付第478号「論談」より-17 - ◇第三者管理の推進 これまでリゾートマンションや投資型のワンルームマンションでは管理会社が管理者となるケースは普通にあった。居住する区分所有者がほとんどいないこれらのマンションでは、実情にも合ったものであり、法律的にも特に問題はない。 しかし最近では、「組合役員の義務を意識」を強調するG社をはじめ、大手管理会社のいくつかが、「高齢化での役員のなり手不足対策」などを口実に、普通のファミリーマンションを対象に、理事会を廃止して管理者に管理のすべてを委任する「第三者管理」方式を意識的に推進しはじめた。◇典型的な双方代理 たしかに管理会社が管理者になることは法律に違反してはいない。しかし、これまで理事会(理事長)の指示(委託)を受けて仕事を行ってきた管理会社が、理事長に代わって管理者に就任するということは、利害の異なる双方の立場を代表する位置に座ることになり、典型的な双方代理になる。管理会社が「管理者」でよいか

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