大規模修繕工事新聞22年6月号(No.150)
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 来年度、大規模修繕工事の実施を予定して検討を進めていますが、足場を設置するために隣接する敷地を借りる必要があります。ところが、隣地の家主から敷地の利用を拒否されてしまいました。マンション建設時のトラブルが原因で、家主にとってはマンション自体が対敵のようなのです。 とはいえ、家主の承諾を得ないことには大規模修繕工事ができません。管理組合としては、どのような解決方法がありますか?隣地の所有者が敷地の利用を承諾してくれない場合、裁判を起こして、承諾に代わる判決を求めることができます。 この裁判で勝訴し、承諾に代わる判決を得ると、それに基づいて隣地の敷地を利用することができます。 大規模修繕工事等を行う際、足場設置の目的等で隣地に立ち入る必要性が生じることがあります。特に、住宅密集地等では、敷地に余裕がなく、建物と隣地境界線との間隔が狭小で、隣地を使用しなければ工事を実施できないという場合もあるでしょう。 民法209条1項本文は、「土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる」と規定しており、修繕工事等を行うために必要な範囲で、隣地を使用し、隣地に立ち入ることを請求することができる権利(隣地使用権)を認めています。 必要な範囲であれば、隣地へ立ち入るだけでなく、足場を組んだり、一時的に資材等を置いたりすること等も認められます。 とはいえ、この権利は隣人の土地に立ち入りを請求することができるに過ぎず、隣人の承諾があってはじめて現実に立ち入ることができるようになるものです。 では、もし隣人の承諾が得られない場合はどうしたらいいのでしょうか。 このような場合は、隣地の所有者を相手方として、承諾に代わる判決を求める訴訟を起こす必要があります。この裁判では、地域性や工事の規模、社会的価値及び緊急性、隣地の使用状況及び隣地が受ける損害の性質と程度、他手段の可能性などが判断材料とされています。 この裁判に勝訴し、承諾に代わる判決が得られた場合は、その判決に基づいて必要な範囲で隣地を使用することができます。仮に隣地所有者が承諾しない場合でも裁判により、敷地への立入りが可能になるということです。 なお、隣地の所有権は、地面だけでなく、その土地の上下にも及びます。ですので、隣地を利用する場合だけでなく、隣地の上の空中に足場がかかるような場合も、同様に隣地所有者の承諾あるいは承諾に代わる判決を得る必要があるでしょう。隣地の家主が足場設置をNG承諾得ないと大規模修繕ができない!?民法で隣地使用権が認めれれるも裁判で承諾に代わる判決得る必要■解説-8 -

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