大規模修繕工事新聞22年5月号(No.149)
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の資金計画、管理組合の運営状況等の適正さについて、認定基準に照らして判定することである。 しかし、認定基準はどうしても客観的指標を求めることになるので、実際の管理が適正かではなく、その基準に該当するか否かが問題となる。例えば、集会の毎年1回以上開催という基準について、白紙の委任状出席で理事長一任でも開催さえすればクリアする。 一方、管理規約や長期修繕計画、修繕積立金については厳しく、管理規約は標準管理規約の最新のものに合わせて改正することが求められる。特別多数決議の大変さを立法者は知っているのだろうか。 まともな長期修繕計画であれば一級建築士に依頼して建物・設備の傷み具合を診断してもらい、そこから中長期の修繕計画を作成する。それなりに費用がかかる作業である。この事業に積極的に費用をかける管理組合がどれだけいるだろうか。 修繕積立金の額については、適正額にあわせるにはかなりの増額が求められる。区分所有者の合意形成が難しいことが目に見える。 マンション管理の適正化を目指す今回の制度により、管理組合の動きだけでなく、業界全体がどのように変わっていくか注目したい。 20年以上にわたるマンションコンサルタントとしての経験から、適正な管理が困難になる要因は建物の高経年化よりも区分所有者の固定化と高齢化であると考えている。 それまで維持修繕等を繰り返して適正管理を続けてきたが、いわゆる陳腐化によって区分所有者の新陳代謝、すなわち若年世代の入居が見込めない。その結果、高齢者の施設入所、長期入院、あるいは死亡によって空き家が増加し、適正管理が困難になりはじめる。 築20年程度のマンションで、上記の陳腐化によって適正管理の継続を阻害する要因は、すでに顕在化している機械駐車設備や重厚な共用設備が管理費、修繕積立金を圧迫する問題である。 ここでいく流動化とは高齢区分所有者の固定化を回避するために若年世代の入居促進を図ろうということである。建物、設備の適正な維持管理が継続されれば、経年に比例して物理的に老朽化し、建替えに至るということにはならない。 重要なのは管理の担い手であり、区分所有者の新陳代謝を促進するための方策である。 現在の築40年超のマンションにおいては住宅性能を向上させる余地が数多く残されており、それらを向上させることによって空き家と高齢化の抑制につながる可能性がある。今回の管理計画認定基準において、これらの取り組みを評価する仕組みを盛り込むべきだろう。 認定マンションの市場評価が向上するという期待は、このような取り組みによって実現すると考えられる。-5 -

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