大規模修繕工事新聞22年5月号(No.149)
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 世界中で愛されるイソップ童話『金の斧』をご存じでしょうか。タイトルにピンとこなくても、内容を聞くと恐らく日本中の方が知っている有名な話です。 あらすじはこうです。ある男が泉にうっかり鉄の斧を落としてしまったところ、この泉の中から女神がすっと現れて男に尋ねるのです。「あなたが落としたのは金の斧ですか?それとも銀の斧ですか?」男は正直に「鉄の斧」だと答えると、女神はその正直さを讃え、金の斧も銀の斧も男に与えました。その後、欲張りな男が同じようにしようとしますが、嘘を吐いたため、自分の鉄の斧も女神から返してもらえなかった、というものです。 この『金の斧』は、正直であることが大切だと伝える寓話とされていますが、これだけでなく現代のパワハラ問題にも使える話です。それはパワハラによく使われる心理状態「ダブルバインド」から逃れる方法を、『金の斧』が教えてくれているからなのです。 ダブルバインドとは選択肢を矛盾した2つのものしか用意しない状態で、他の選択肢を与えません。よくセールスである、「AとBどっちを買いますか?」というのも、ダブルバインドです。Cを買うという選択肢や、買わないという選択肢がないのです。 工事会社の倒産等による工事中断など、万が一の際に対応するのがマンション大規模修繕工事完成保証制度です。工事の継続が不可能になった際の進捗状況、支払い済みの工事着工金・中間金を第三者機関が調査し、現場状況の金額に差異が生じた場合の損害を保証します。代替工事会社への支払いが当初の契約金額を超える場合にも保証されます。 ただし、保証料は工事会社(管理会社含む)が負担することになるので、管理組合側から工事会社に申し入れしないと、工事会社は対応してくれません。このため、制度の普及が遅々として進まないという現状があります。 工事の完成が停滞すれば責任は理事会に降りかかってきます。 そこで、全建センターのマンション大規模修繕工事完成保証制度では工事完成保証や瑕疵担保責任保険の欄等を盛り込んだ「マンション修善工事請負契約」をすすめています。 詳しくは全建センターまでお問い合わせください。<問い合わせ先>一般社団法人 全国建物調査診断センター(一級建築士事務所 東京都知事登録第62699号)TEL:03-6304-0278 FAX:050-3142-9761E-mail: info@zenken-center.com ご相談・お問い合わせいただいた方に、最新刊小冊子「大規模修繕工事・完成保証制度のススメ」電子版を無料進呈します。 実はこれ、パワハラに多いものなんですよ。例えば、「分からないことがあったら質問しろ」と言っていたにも関わらず、いざ質問をしたら「忙しい時に聞くな」と突き放す。このような場面は、会社勤めの方なら1度や2度は目にしたことがあるでしょう。やられた相手は、何が正解か分からず混乱してしまい、最悪、精神疾患を発症してしまうでしょう。 このダブルバインドから逃れるために必要なのが、第3の存在です。『金の斧』の男が、自分の斧は鉄の斧だと女神に告げたのは、第3の存在を示すものでした。真実を第3の選択肢として、相手に提案するのが、ダブルバインドから逃れる唯一の方法です。 先の例なら、「忙しい時に聞くな」と突き放されたなら、「また後ほどうかがいます」と第3の提案をします。それを拒否するようでしたら、会社の人事に相談です。人事がいない会社なら、他の社員に相談しましょう。これも「第3」の提案、真実を証明するために必要なものです。 もし、社内での人間関係がつらいと感じた時は、『金の斧』を思い出してみてください。第3の存在が、きっとあなたを救ってくれるでしょう。(文:コラムニスト・ふじかわ陽子/絵:吉田たつちか)-15 - 保証料は工事会社が負担することになるので、管理組合側から工事会社に申し入れしないと、工事会社はやってくれません!

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