大規模修繕工事新聞22年4月号(No.148)
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・避難通路確保の観点から、荷物の長時間放置や大量・乱雑な放置を禁止する・管理組合は荷物の紛失や破損、汚損等の責任を負わない・ 置き配の荷物の破損や汚損等に起因する共用部分の棄損等は利用者の責任と負担により復旧する・ 置き配の利用に起因する隣接住戸等とのトラブルは置き配利用者の責任で対応する・ その他置き配の利用に伴うトラブル等は利用者の責任で対応する なお、共用部分の配管の取替えと専有部分の配管の取替えを同時に行うことにより、専有部分の配管の取替えを単独で行うよりも費用が軽減される場合には、これらについて一体的に工事を行うことも考えられる。 その場合には、あらかじめ長期修繕計画において専有部分の配管の取替えについて記載し、その工事費用を修繕積立金から拠出することについて規約に規定するとともに、先行して工事を行った区分所有者への補償の有無等について十分留意することが必要である。 注意点としては、①専有部分の費用をあらかじめ長期修繕計画に記載する、②修繕積立金からの拠出する旨を規定する、③修繕積立金が値上げすることもある、④先行工事を行った区分所有者への補償、⑤専有部分に係る工事のうち、どこまでの範囲の工事を修繕積立金から支出することにするのかといったことについて、管理組合として事前に慎重な検討を行っておくことが必要になります。⑸管理計画認定および要除却認定の申請 管理計画認定および要除却認定の制度はマンション管理適正化法・マンション建替円滑化法の改正により、新しく設けられた制度です。 管理組合がこれらの申請を行う場合には総会の決議を要します。48条(総会の決議事項)の中に管理計画認定の申請と要除却認定の申請という文言が追加されました。⑹その他所要の改正ア 書面・押印の見直し 区分所有法42条3項では、「議事録が書面で作成されているときは、議長及び集会に出席した区分所有者の二人がこれに署名・押印しなければならない」と規定がありましたが、令和3年9月1日より「デジタル社会形成整備法」が施行されたことに伴い、区分所有法の改正が行われ、令和3年9月1日より議事録への押印は不要となりました。 そのため、従前の49条(議事録の作成、保管等)の条文では、議事録に「署名・押印しなければならない」となっていましたが、押印の文言が削除され、「署名しなければならない」のみとなりました。 区分所有法上は押印しなくてもよくなりましたが、管理規約に押印の規定が残っているのであれば、管理規約に基づいて運用すべきではないのかといった弁護士見解もあります。 今後、議事録の押印を不要にしようとする管理組合は、組合員に議事録に押印しないことを説明した上で、管理規約の改正を行ってから運用をはじめた方がよいでしょう。イ 近年の最高裁判決等に伴う改正…等・最高裁平成29年12月18日判決文 この判決で35条3項「3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事のうちから、理事会で選任する」と管理規約に定められている場合には、理事の互選により選任された理事長については、理事会の決議でその職を解くことは可能であると判断されています。 この最高裁判決に基づいて、35条に「解任する」といった文言が追加。「理事」を解任する場合には総会の決議が必要となります。⑵ マンション内における感染症の感染拡大のおそれが高い場合等の対応 18条関係コメントに「マンション内における感染症の感染拡大のおそれが高いと認められた場合において、使用細則を根拠として、居住者による共用部分等の使用を一時的に停止・制限することは可能である」といった考えが示され、共用施設の使用停止を使用細則で定めることが可能になりました。 コロナウイルスまたは今後新たな感染症などを想定し、あらかじめ共用施設の使用に関して、管理組合としてどのような対応をとるのか、使用細則に定めておくことを検討しておくことも必要です。 通常総会の開催も、感染拡大の防止等への対応として、やむを得ない場合においては総会の延期が可能であるという考えが、42条第3項関係コメントに明記されました。 標準管理規約では、通常総会は「新会計年度開始以後2カ月以内」に開催することになっていますが、災害や感染症拡大などの事情が生じた場合には、期限までの総会の開催が困難となることもあるので、必ずしも「新会計年度開始以後2カ月以内」に通常総会を開催する必要はなく、これらの状況が解消されたのち、遅滞なく招集すれば足りるとされました。 したがって、災害等の発生時には理事会において、WEB会議システム等利用の可能性について考慮しつつ、最終的には総会の延期も視野に入れて対応の検討をしてください。⑶置き配使用細則 本来、共用廊下は共用部分であり、マンション内の通路で、他の住民も利用しているため、組合員がそれぞれ勝手な使い方をすることはできません。消防法の関連からも共用廊下に私物を放置することは禁止しているのが通例です。 標準管理規約の改正では、「専用使用部分でない共用部分に物品を置くことは原則として認められない」としつつ、「宅配ボックスがない場合など、例外的に共用部分への置き配を認める」とし、その場合には「長期間の放置や大量・乱雑な放置等により避難の支障とならないよう留意する必要がある」とコメントしています。 したがって、管理組合として置き配を認める場合には、使用細則で置き配を認めること、およびその際のルールを定めておくことが必要になります。置き配を認める場合、事前に管理組合内で検討が必要と思われる事項(参考例)⑷専有部分配管 21条第2項は従来通り、「専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行うことができる」しています。 今回の改正で21条関係コメント⑦に「なお」以降が追加されました。 「配管の取替え等に要する費用のうち専有部分に係るものについては、各区分所有者が実費に応じて負担すべきもの」であることは、従来の規定通り、大原則になります。-5 - 団 地 型⑴敷地分割事業と分割請求禁止規定との関係性 マンション建替円滑化法の改正により、団地型マンションの再生に関する合意形成を取りやすくするために「敷地分割制度」が創設されました。従来は全員合意しか認められなかった敷地分割決議を、5分の4の割合で敷地分割を可能とし、敷地分割により危険な一部の棟を含む街区を売却することができるといった制度です。

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