大規模修繕工事新聞21年9月号(No.141)
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ガイドライン改訂の要点 ガイドラインの改訂がなされたわけであります。これが令和4年4月スタート予定とされている地方公共団体における「マンション管理計画認定制度」の導入につながります。すなわち、良い管理をしていくためにどうしていくのか、そして良い管理をしているマンションに対してはきちんと評価 をしていこうという流れです。そのためにも認定制度の評価基 準に合わせてガイドラインが改訂されているわけです。長期修繕計画作成ガイドラインや修繕積立金ガイドラインが 単独であるのではなく、法の改正があり、なぜ法の改正があったのか理解の上で、ガイドラインの改訂があるものであり、さらに先々の認定制度の評価基準と表裏一体のものであるとご理 解をいただきたいと思います。 大規模修繕工事の計画スパンは、必要性の薄い「12年周期」 から、現実的にロングスパン化されてきていることを踏まえると、計画期間が25年ですと、大規模修繕工事の実施が、この期間に1回しか出てこない可能性があることになります。  そうすると必要な修繕積立金の全体像が見えにくいということもあり、大規模修繕工事を2回行って収支がどうなるのか、 赤字なのか黒字なのかわかるようにする必要性があるため、計画期間を30年に延ばしたということです。  修繕周期の目安については、ピンポイントではなくて現実的には一定の幅帯として存在するわけですから、幅を持たせた記 載の仕方をします。同時に取り換えや更新時期についての現実的な見直しということも部分的に出ています。特に大規模修繕 工事の「12年周期」がひとり歩きしてしまっていることについて、「12 ~ 15年」という表現が使われました。 長期修繕計画作成ガイドラインの改訂部分要点①望ましい長期修繕の計画期間として、現行のガイドラインでは25年以上としていた既存マンションの長期修繕計画期間を、新築マンションと同様、大規模修繕工事2回を含む30 年以上とする。 ②大規模修繕工事の修繕周期の目安について、工事事例等を踏まえ、一定の幅を持たせた記載とする。  ※現行のガイドラインの参考例:【外壁の塗装・塗り替え】 12年→12 ~ 15年、【空調・換気設備の取り換え】15 年→13 ~ 17年など ③社会的な要請を踏まえて、修繕工事を行うにあたっての有効性などを追記。  ⒜マンションの省エネ性能を向上させる改修工事(壁や屋上 の外断熱改修工事や窓の断熱改修工事等)の有効性  ⒝エレベーターの点検にあたり、国土交通省が平成28年2 月に策定した「昇降機の適切な維持管理に関する指針」に沿って定期的に点検を行うことの重要性 ※令和3年9月28日国土交通省住宅局参事官(マンション・賃 貸住宅担当)発表資料  「長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン・ 同コメント」「マンションの修繕積立金に関するガイドライ ン」の見直しについてより一部抜粋引用  修繕工事の有効性については、なぜそのような工事をするのか、工事をやる意義を理解した上で、「じゃ、やろうじゃないか」 という機運を盛り上げるような考え方にシフトしていく記載の仕方になりました。 たとえば、省エネ性能の向上です。環境負荷を考えずに暮らすことはできない昨今ですので、外壁や屋上の外断熱、あるい は窓の断熱改修などの有効性が高くなっています。エレベーターは別途法定点検が必要になりますけれども、事故等が起こらないように未然に防止するという観点から、定期的な点検の実施を行うことの意義、重要性が謳われるように なっています。 総じて言えるのは、現実のマンションの維持管理と大規模修繕工事の状況に合わせてガイドラインの改訂がされているということです。まさに現実で起こっていることを踏まえて、ガイドラインのほうが変わってきたというのが、今回の改訂の特徴 ではないかと思います。全建センター 18年周期実現化のための具体策 ①外壁  マンション外壁の変遷をみると、主要な部分は塗装からタイルへ、パネルの外壁へと、より高耐久性の仕様となっています。タイルやパネルは割れる、剥がれるといった劣化はあるものの、建物を紫外線から守ることで躯体自体の劣化や変色を軽減させています。 ②手摺  手摺の変遷は、スチール製(鉄製)からアルミ、パネルへと、 サビない、設置根元のコンクリートが割れにくい仕様になって います。  手摺は根元から直にコンクリートにはめ込んで設置されています。鉄製は外気の気温差などで膨張・収縮を繰り返すため、 コンクリートを破壊するデメリットがありました。 ③シーリング  シーリングはノンブリードタイプが使用されるようになり、 可塑剤による汚れが付着しにくくなっています。 ④床材  バルコニー床、開放廊下床がコンクリート・モルタル仕上げ、 よくても塗装仕上げだったものから塩ビシート貼りへなど、防 水機能が向上しています。 ⑤超高層タワーマンションの普及  近年、高層マンションには免震構造、高強度コンクリートが 採用され、タイルも現場での貼り作業から工場で製造して現場 で組み立てる型枠打ち込みにより、精度が向上しています。免震構造は地震対策だけでなく、外壁面のひび割れが起きにくいという効果もあります。 ⑥長期修繕計画  長期修繕計画の普及と定期的なメンテナンス、手入れをする ことへの関心と習慣化により、より大がかりな修繕工事を必要とするダメージを防いでいます。 ◇  新築時からすでに高耐久の材料が随所に使われているという 現実。こうしたことを踏まえて、全建センターでは大規模修繕 工事の12年周期というものはいかにも早いということを、セ ミナー等で何度も何度もお話させてまいりました。  今回、こうした現場の声が国の施策であるガイドラインに反 映されたものと思います。-3 -

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