大規模修繕工事新聞21年9月号(No.141)
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 一般社団法人全国建物調査診断センター(全建センター)が12月19日、You Tubeで公開した第55回管理組合セミナーの模様を紙上採録します。今回は全建センター筆頭理事・佐藤成幸氏が昨年9月28日に公表になった「長期修繕計画作成ガイドランおよびマンション修繕積立金ガイドラインの改訂を冷静に読み解く」と題して講演しました。なお、これまでのセミナーは、You Tubeにより動画配信を行っています。全建情報図書館でもセミナーの内容等を収録した書籍を発行しています。(一般社団法人全国建物調査診断センター筆頭理事 佐藤 成幸)ガイドライン改訂の背景ガイドライン改訂の趣旨平成17年、マンション管理標準指針ができて、マンション の維持管理のための具体的な指針「何を」「どのような点」に 留意すべきかが定められました。これを受けまして平成20年6月、国土交通省において、長 期修繕計画作成ガイドラン、長期修繕計画標準様式が発表され ました。それまでは長期修繕計画というものがおざなり、ある いは「ない」、あっても管理会社ごとにフォーマットが異なっていて、結果、大規模修繕工事の時期になっても修繕積立金が 足らない、先々の計画的な修繕が立ち行かないというようなことが、マンション管理の現場で頻発いたしました。 この時点で、マンションの維持管理のためには優良な長期修 繕計画が必要であることに視点が当たりまして、国土交通省で はじめて統一のフォーマット、作成のためのガイドラインが発 表されたわけです。 こうした長期修繕計画作成のガイドラインに合わせて、積み 立てる額と支出のアンバランスを整合する修繕積立金について も何らかの目安が必要ということで、平成23年4月に国土交 通省ではマンションの修繕積立金に関するガイドラインを発表 しています。    そして令和3年9月28日、改正マンション管理適正化法を 受け、「長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン・ 同コメント」「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」 も改訂・発表されました。改正マンション管理適正化法においては、令和4年4月にスタートする「マンション管理計画認定 制度の認定基準」にも長期修繕計画・修繕積立金に関する規定 が盛り込まれています。1.高経年のマンションストックが増大する社会情勢 2.管理組合が主体的に維持管理と修繕に努力する義務があるが、現実との乖離が随所にみられる  大規模修繕工事、長期修繕計画上の計画修繕が修繕積立金の 不足で計画通りなかなか実施ができないといった現実もあるということです。そのため全建センターにも、そうした内容の相 談が継続してあるということは、非常に多くのマンションが、 こうした悩みを抱えているという現実です。  従って、管理組合はマンションを適正に管理するよう努力し なければならないが、現実的には難しいという乖離がみられる というところが、2つめの改訂の趣旨であろうかと思います。 3.放置することでスラム化、外壁崩落など事故や社会問題化しかねない  マンション管理組合の視点以外から少し考え方を変えて、マ ンションのある地方公共団体や国の目線からすると、「修繕を しなくてもいいんだ」という住民側からの事情だけで放置し、 スラム化したとします。  マンションは、住居としての社会的なインフラというもの… 通りに面している場合もあり、外壁の崩落などがあると、第三 者を巻き込んだ事故の発生につながりかねないということがあります。  あるいはそうした危険性があることから社会問題化しかねない要素があるということで、決して住民の事情だけでマンショ ンの維持修繕を放置しておいていいわけにはいかな事情がある ということです。4.特に都市部ではマンションの集中がみられ住居がある地域 の安寧な生活をおびやかす懸念にもなる特に都市部ではマンションの集中化、マンション住まいという割合が非常に高く、地域の安寧な生活をおびやかす懸念にもなりかねないといわれています。 5.こうした対策としてマンション管理適正化法や長期修繕計画作成ガイドライン、マンション修繕積立金ガイドラインを制定・発信し、一定の改善は見られたが、現実的ではない点もあり、いまだ道半ばであったマンション管理における一定の改善効果がみられたのは事実 ではありますけれども、現実的ではないものも一部ありまして、目指すところの道は半ばであったのかなというふうにも見てとれます。上記の状況を改善すべく、マンション管理適正化法の改正、 ならびに各-2 -

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