大規模修繕工事新聞22年1月号(No.145)
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一般社団法人全国建物調査診断センター(全建センター)が12月19日、You Tubeで公開した第55回管理組合セミナーの模様を紙上採録します。今回は全建センター・菅純一郎理事がコロナ禍であらわになった現実、問題点についてまとめました。なお、これまでのセミナーは、You Tubeにより動画配信を行っています。全建情報図書館でもセミナーの内容等を収録した書籍を発行しています。新型コロナ・ウイルスによる影響がなかなか落ち着きません。みなさんのマンションでも管理組合活動にご苦労していることだと思います。この2年のウィズ・コロナの学習の中で、いろいろな形のマンション管理のあり方・考え方が作られてきたと思いますが、当セミナーもその一端になればと考えています。 それでは、今、マンション管理組合が抱える問題と新型コロナ・ウイルスの影響によって変化しているマンション管理についてお話していきましょう。管理会社契約拒否問題 11月に経済雑誌に掲載された記事が話題を呼んでいます。目を引いたのは「管理会社と契約できなくなる」という内容でした。 コロナ前から大手管理会社をはじめ、管理委託業務の内容と契約金額が釣り合わなくて、契約の更新をしないという傾向が出はじめていました。2018年ころからみられるようになった問題ですが、コロナ禍が輪をかけたのではないかという現実があります。 原因として以下のような要素だと推察します。①人件費高騰と人材不足 主に管理員、清掃員の人材不足が叫ばれて久しいのですが、元々身体的にも精神的にもたいへんな仕事の上、その割に人件費として安くなりがちで募集をかけてもなり手がなかなか集まりません。 といって、人件費を理由に委託費の値上げを要請しても管理組合側の財政問題もあり、承認を得られない事情もあります。 そうすると、管理会社は自らの水準の利益を削る、まして自腹士 ・ビルディングドクター ・公認ホームインスペクター 一般社団法人 全国建物調査診断センター理事 菅 純一郎・一級建築施工管理技士 ・一級管工事施工管理技を切ってまで業務に当たることはそもそも経済活動としておかしな話になってしまうので、契約どおりにやることができないのであれば契約の更新ができません、つまり「撤退」という判断となるわけです。②事業構造的な問題 今までは基幹事務、その他の日常管理に加え、小修繕から大規模修繕まで工事の施工も含め、トータルな事業展開が期待できていたことから、管理会社にもメリットがありました。 しかし、インターネットの普及により、各工事はもちろん、例えばエアコンを変える、照明器具を変えるといった話の中で、相見積もりや価格交渉が厳しくなってしまったという側面があります。 今や物を買うという行為においては、インターネットが一番安く、便利になりました。給水用のポンプですらAmazonで調べられてしまうという現実があります。 そうするとやはり、工事そのものに事業性が期待できなくなってしまっています。③居住者の過大な要求 場合によっては、居住者同士のトラブルにまで関与を求められることから、人的負担が過大になっており、離職原因にまでなることも多々あるようです。 居住者間のコミュニケーション不足の希薄さにより、ちょっとしたことがトラブルになりやすいという傾向があります。 コロナになってから、非常に多くなっているのは音のトラブルです。在宅勤務になっているので、ちょっとした音が気になりはじめるわけです。 ただ、マンションの構造を考えると、ある程度は許容しなければ仕方ないというものでもあるので、マンションにコミュニティがあれば収められるものが収められなくなっている問題があらわになっているといえます。問題の本質的根幹 そもそも管理委託契約のベーシックなメニューは以下のようなものになります。-2 -

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