大規模修繕工事新聞22年1月号(No.145)
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 滞納管理費等の回収において、管理組合側の弁護士費用は滞納者と管理組合のどちらが負担するのか―そもそも滞納がなければ訴訟費用は不要なはずで、管理組合(きちんと収めている他の区分所有者全員)が負担するのは釈然としないと考えるのが普通でしょう。こうした不公平感を払拭した判決例を紹介します。あなたのマンションの管理規約では弁護士費用等の回収もできるよう明文化されていますか?【事案の概要】 管理組合は滞納区分所有者に対し、①3年分滞納した管理費、修繕積立金、駐車場使用料、CATV回線使用料など合計約460万円および確定遅延損害金(年18%)約130万円と②弁護士費用約103万円を請求しました。 管理規約には弁護士費用につき、「違約金としての弁護士費用を加算して請求することができる」と定められています。 原審は、弁護士費用について「実費相当額」ではなく、「裁判所が相当と認める額」として50万円のみを認容しました。 管理組合はその判断を不合理だとして控訴。管理規約の「違約金としての弁護士費用」の解釈が争点となりました。管理規約は国土交通省の標準管理規約に準拠しています。【東京高裁の判断】 管理規約により弁護士費用を違約金として請求することができるようにする定めは合理的であり、違約金の性格は違約罰(制裁金)と解するのが相当であると判断しました。 滞納者は、違反者に過度な負担を強いると主張しましたが、自らの不払いに起因することであり、自ら回避することができるものであるから、不合理ではないとしました。【コメント】 区分所有者が管理費の滞納など管理規約に違反した場合、これは債務不履行にあたりますので、管理組合は、滞納者に対して、債務不履行に基づく損害賠償請求を行うことができます。 この「損害」の中に弁護士費用が含まれるのであれば、滞納者に弁護士費用を請求することは何ら問題がないのですが、判例上、債務不履行の「損害」に弁護士費用は含まれないことと解されています。 そこで、あらかじめ管理規約において、弁護士費用など違約金の内容を明らかにしておくことにより、訴訟になったときに、「損害」ではなく、違約金として請求することにより、弁護士費用を相手方に請求することができるようになります。 このことから、標準管理規約の60条2項には、管理費の未払について「違約金としての弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して、その組合員に対して請求することができる」と規定されています。 なお、管理規約上このような定めがあったとしても、違約金としての「弁護士費用」の解釈について、地裁レベルでは、弁護士費用の実費相当額を認める裁判例と裁判所が相当と認める範囲でしか認めない裁判例とに分かれた状態でした。 本件は、このような状況の下で、判示のような判断を示し、違約金としての弁護士費用の解釈として、実費相当額と解することを明かにしたものです。◆山村弁護士への相談は…☎03−5510−2121 〒100−0012東京都千代田区日比谷公園1−3 市政会館4階 ☎03−5510−2121 FAX. 03-5510-2131 E-mail:yamamura@oylaw.jp-13 -

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