大規模修繕工事新聞21年11月号(No.143)
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理事会当日、理事が海外出張に「妻を代理人に」は許可できますか?原則、代理出席は不可認めるには規約の明文規定が必要 理事会の日に、一人の理事から、急に出張の仕事が入ったという理由で、「妻を代理人として出席させたい」との申し出がありました。このように配偶者を代理人として理事会に出席させることは、許可できることでしょうか?  原則として、理事会に代理人を出席させることは許されません。ただし、管理規約に「理事に事故があり、理事会に出席できない場合は、その配偶者又は一親等の親族に限り、代理出席を認める」旨の規定がある場合は、配偶者等を代理人として出席させることができます。■解説 理事は、当該個人への信頼に基づいて総会から選任され、①法令、規約および使用細則その他細則、②総会および理事会の決議に従い、組合員のため、誠実にその職務を遂行する責任を負っています(標準管理規約37条1項)。 理事の立場が当該個人への信頼に基づく以上、理事により構成される理事会には、理事以外の者が参加できないのが原則です。 ただ、実際には、仕事や病気などの関係で、理事が自ら理事会に出席できないということもあるでしょう。このような場合に本人以外の出席を一切認めないとなると、半数以上という理事会の定足数を満たすことができなくなり、理事会が成立しないことになってしまいます。 このようなことから、管理規約において代理出席を認める旨規定されていれば、代理人による出席が認められると考えられています。 もっとも、規約で定めさえすれば誰でも代理人になれるというわけではありません。前述のように、理事は当該個人への信頼に基づいて総会から委任を受けています。その委任の趣旨に反しないためには、代理人の範囲を理事本人に近い範囲に限定する必要があり、理事の配偶者や一親等内の同居親族に限定されていて初めてその規約が有効になると考えられています。 実際に同様の規約の有効性が問題となった判例(最判平2. 11. 26)において、最高裁は、①理事に事故がある場合に限定して、②被選任者の範囲を理事の配偶者又は一親等の親族に限って、③当該理事の選任に基づいて、理事会への代理出席を認めるという限定要件を設けた規約の効力を認めました。 標準管理規約53条のコメントには、「理事に事故があり、理事会に出席できない場合は、その配偶者又は一親等の親族に限り、代理出席を認める旨を規約に定めることもできる」と記載されています。 従って、本件においても、このような規約があれば、妻を代理人として理事会に出席させることができます。-8 -

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