大規模修繕工事新聞21年11月号(No.143)
8/58

超高圧洗浄車200MPa前後の圧力をかけた水で削るように塗膜を剥がす。 塗膜は基本的に「有機塗料」です。このため、紫外線による表面劣化や変褐色、風雨での汚れやコケ等の付着、下地の動きや雨水の浸入による付着力の低下など、さまざまな原因で塗膜の劣化が起こります。 一部塗料には「無機塗料」や「無機有機複合塗料」などの商品もありますが、100%無機なものはないので劣化は避けられません。 定期的な修繕を繰り返すことによって塗膜が健全な場合、表面を高圧水線上で洗い流し、劣化が進行していない塗膜の上に新しい塗膜の塗り重ねを行うことができます。 しかし、塗膜の付着力低下が確認された場合には、旧塗膜を剥離して修繕を行うことになります。原則、新築工事で施工した塗膜まで剥がすので、その劣化状況によっていくつかの塗膜剥離工法を選択することになるのです。劣化状況により想定される以下①~⑤の内容によって、塗膜剥離工法を選択する際の考え方とします。塗膜剥離工法を選択する考え方①目視診断で明らかに塗膜剥離が各所に発生している場合②塗膜の付着力試験により、付着力強度が基準より低下している場合③外壁に特殊塗料が施工されていて、塗り重ねにおいて付着力が期待できない場合④既存塗膜表面が煤煙、油、薬品等で汚染され、高圧水洗浄で洗浄することが不可能な場合⑤躯体コンクリートに重大な欠陥が想定され、塗膜を剥がして調査および補修が必要な場合塗膜剥離工法の比較■超高圧水洗浄メーカーや施工会社によって異なりますが、超高圧水洗浄は200MPa前後の圧力をかけた水で削るように塗膜を剥がします。高圧水洗浄車を配置し、窓からの浸入対策、室外機、照明、インターホン等の電気機器にビニールで養生を行って剥離します。 当然のことですが、大量の水を使用することと通常使用と料金体系が異なるため、事前に水道局や下水道局に連絡をする必要があります。 また超高圧水に手が触れると簡単に指が切断される強さなので、居住者が生活している中での工事はリスクを伴います。水圧により、さまざまな器具の破損や故障も発生することがあるので注意が必要です。■軟化剤+高圧温水洗浄併用既存の塗膜を軟化剤で柔らかくし、40MPa前後の高圧温水で塗膜を剥がします。養生等は超高圧水洗浄のときと同じですが、軟化剤を吹き付けた後、全面をビニールで覆い、既存塗膜に軟化剤を浸透させる工程があります。 超高圧水洗浄と同様、剥がした塗膜の処理が重要な工程となります。剥がれた塗膜は洗浄水とともに雨樋に排水され、雨水管を通り河川へ流れてしまうため、排水処理や周辺に飛び散った塗膜の清掃が非常に大変な作業となります。最近の工事では環境保全を考慮し、飛散や河川への流出対策を行っています。-8 -

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る