大規模修繕工事新聞21年11月号(No.143)
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 法定点検で見つかり、結局、全面更新しなければいけなくなるものは計画修繕として見込んでおく必要があるといえます。工事の時期を法定点検によって見定めていくと解釈したほうが正しいでしょう。 長期修繕計画作成ガイドラインで対象外としているのは部品交換や修理であって、こういった設備の全面更新は、当然、推定修繕工事として見込んでおく必要があります。○「5年程度の見直し」の強調三 長期修繕計画の精度 一定期間(5年程度)ごとに見直していくことを前提としています。 一定期間ごとに見直すという文言が、ガイドライン・コメントの各所で出てきますけれども、今回の改訂では一定期間の後に全部「5年程度ごと」とわざわざ書き込まれています。それくらい「5年程度ごと」の見直しを強調しているという、国土交通省の強い意思がうかがわれました。 マンション管理適正化法の管理計画認定制度では長期修繕計画の作成・見直しを「7年以内」としています。見直しは原則「5年程度ごと」、長くても「7年以内」というふうに見ていくべきとみております。○耐震改修工事計画に関する記載<コメント> 特に、耐震性が不足するマンションは、区分所有者のみならず周辺住民等の生命・身体が脅かされる危険性があることから、昭和56年5月31日以前に建築確認済証が交付(いわゆる旧耐震基準)されたマンションにおいては、耐震診断を行うとともに、その結果により耐震改修の実施について検討を行うことが必要です。なお、耐震改修工事の費用が負担できないなどの理由によりすぐに実施することが困難なときは、補助及び融資の活用を検討したり、推定修繕工事項目として設定した上で段階的に改修を進めたりすることも考えられます。 「5マンションのビジョンの検討」として、耐震性、断熱性などの性能向上を図る改修工事の実施についての検討のことが記載されています。 その中で耐震は非常に大きな話なので細かく書いてあるのですが、耐震改修工事はちょっとやそっとでできるものではありません。いろいろハードルがあります。 ガイドラインの改訂では、補助や融資を活用すること、段階的に改修を進めることが言及されています。 「段階的に」ということが重要です。一気に何億円もかけてできないのであれば、1億円ずつ3回に分けてやりましょう。そういうことも視野に入れて、安全性を保たなければならない。 とはいっても、耐震改修はなかなか進まないのが実態です。耐震診断さえ実施できていないマンションがいまだにたくさんあるためです。診断を行わなければ、耐震改修費用はわかりません。このため、長期修繕計画に入れようがないのです。 したがって、耐震診断が実施できていないマンションでは、まず耐震診断を長期修繕計画に盛り込み、直近のうちに診断を行うことが重要な最初の一歩になると考えます。○ガイドラインの計画期間に関する記載5 計画期間の設定 計画期間は、30年以上で、かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上とします。<コメント> 外壁の塗装や屋上防水などを行う大規模修繕工事の周期は部材や工事の仕様等により異なりますが、一般的に12 ~ 15年程度ですので、見直し時には、これが2回含まれる期間以上とします。 この背景には、大規模修繕工事の長周期化があります。今まで12年程度と言われていたものが、ここのところ一般的には12年~ 15年という記載に変更されています。 もっと言えば、16年でやっている管理組合も結構あります。この背景から30年以上、大規模修繕工事が2回以上となっています。○事前調査の重要性に関する記載<コメント> 部材や工事仕様、設備や工法等の技術革新によっても適切な修繕周期が変わる可能性がある点にも留意する必要があります。 設備及び建物の劣化状況に関する調査・診断の結果を踏まえた上で、修繕工事の必要性や実施時期、工事内容等を検討することが重要です。 世の中にはずさんな長期修繕計画はいまだに見られるんです。どうずさんかというと、修繕項目の周期を固定して、どのマンションにも当てはめていればいいとしている例です。決まった周期を適当に当てはめればいいという長期修繕計画が散見されます。 建築士などの技術者が劣化調査をし、そのマンションに適したオリジナルな計画をきちんと、このマンションはこの理由で12年周期、15年周期というふうに、作成者が決めなければいけないんだと思ってください。ここのところは重要な話です。○長期修繕計画見直しにかかる時間の周知に関する記載10 長期修繕計画の見直し 見直しには一定の期間(おおむね1~2年)を要することから、見直しについても計画的に行う必要があります。オリジナルの長期修繕計画を作るためには当然、調査をしっかりやらなければいけないし、建築士がその技術力をもってしっかり吟味しなければならない。さらには管理組合とかなり打ち合わせをして、そのオリジナルの計画を作っていかなければならない。そうなると簡単ではありません。ですから、最低でも数カ月間はかけて、長期修繕計画を作らなければならない。そこで修繕積立金の見直しがあれば、そこからまた調整をしなければいけない。そうすると1年を超える場合もある。したがって見直しも計画的に行う必要があります。 簡単にポンと出して、ポンと承認されて、はい終わりというものではありません。総会決議を要することもきちんと認識してもらいたいと思います。-3 -

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