大規模修繕工事新聞21年11月号(No.143)
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○省エネ性能の改善に関する記載<コメント> 特に、築古のマンションは省エネ性能が低い水準にとどまっているものが多く存在していることから、大規模修工事の機会をとらえて、マンションの省エネ性能を向上させる改修工事(壁や屋上の外断熱改修工事や窓の断熱改修工事等)を実施することは脱炭素社会の実現のみならず、各区分所有者の光熱費負担を低下させる観点からも有意義と考えられます。省エネ性能の記載が追加されました。なぜかというと築古の省エネ性能の低い建物がマンションを中心に増えてきてしまったことが要因です。 省エネ性能の向上は現状維持の修繕ではなく改良なので、これまでにない費用がかかることが想定されます。今までの大規模修繕工事の倍できかないような金額になってしまう。だからこそ長期修繕計画にこれを盛り込むことによって、将来、今建っているマンションと同等、あるいはこれから建つマンションと同等の性能を維持できるということに言及しています。 今後は、脱炭素社会の実現・各戸の光熱費の提言を踏まえ、築古のマンションこそ、長期修繕計画にこれらの省エネ改善を盛り込むことがますます重要になっていきます。■経年マンションを見据えた長期修繕計画 今回の改訂の印象としまして、私見ですが、経年マンション、特に高経年マンションを意識した改訂になっているという印象を受けています。 「長期修繕計画標準様式」「長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」を策定した13年前(2008年)と比べて、高経年マンションのストックは格段に増えています。そうすると、例えば給排水設備改修工事や窓交換工事など、大規模修繕工事以外の高額工事も増えることになります。 こうしたかなりおカネがかかる工事によって、修繕積立金不足を引き起こす、あるいは修繕積立金が足らないから必要な工事ができない、そういう管理組合も一定数あると推測します。 今回の改訂では、これらの時代背景に即した改訂が行われたという印象です。経年(高経年)マンションを対象とした改訂項目が多く含まれていました。では新築、あるいは築浅のマンションは関係ないのでしょうか。実は高経年化してから対策を行うのでは全然遅いのです。 築浅のマンションは高経年化したときを見据えて、今から対策を打つ必要があるので、当然他人事ではなく、「明日は我が身」として今回の改訂部分を見ていかなければならないといえるでしょう。 2022年のマンション管理適正化法改正により、管理計画認定制度ができますが、この認定基準に「長期修繕計画標準様式」に準拠した長期修繕計画が必要であるという内容が含まれています。「マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針」の中に長期修繕計画の作成・見直しに当たっては「長期修繕計画作成ガイドライン」を参考に適切なものとするよう配慮する必要があるといった記載があります。 そこで、国土交通省では「長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」及び 「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の見直しを行いました。 ここでは、10月16日にオンラインで開催された日本マンション学会2021年度秋の大会から、明海大学不動産学部・藤木亮介准教授が「長期修繕計画作成ガイドライン」の改訂について講演した内容を紙上採録します。○専有部分の給排水管の取替えに関する記載<コメント> 共用部分の給排水管の取替えと専有部分の給排水管の取替えを同時に行うことにより、専有部分の給排水管の取替えを単独で行うよりも費用が軽減される場合には、これらについて一体的に工事を行うことも考えられます。その場合には、あらかじめ長期修繕計画において専有部分の給排水管の取替えについて記載し、その工事費用を修繕積立金から拠出することについて管理規約に規定するとともに、先行して工事を行った区分所有者への補償の有無等についても十分留意することが必要です。○法定点検の結果に対する処置費用に関する記載<コメント> 法定点検の結果、要是正の判定となった場合に必要となる修理や部品の交換等を速やかに行うことが重要であるため、これらの対応については、原則として長期修繕計画の推定修繕工事の対象外とすることが望ましいと考えられます。 マンションを良好に保つためには日常的または定期的な点検をすることが必要です。しかし、定期点検は前提条件であって、計画修繕として長期修繕計画に盛り込むものではありません。 このため、定期点検の結果必要となった部品の交換や修理は、「原則として長期修繕計画の推定修繕工事の対象外とすることが望ましい」と明示されています。 ただし、例えば消防点検の対象となる「連結送水管」など、定期的な法定点検で漏水が発見され、全面更新しなければならないことが多々あります。 このとき、法定点検で見つかったからといって連結送水管の全面更新は対象外でいいのでしょうか? 長期修繕計画というのは、共用部分の計画修繕工事について計画するものです。ところが、今回、専有部分である住戸内の給排水管の更新について言及されています。 専有部分の給排水管の工事を共用部分と一体的に行う場合は、①長期修繕計画に盛り込み、②修繕積立金からその費用を支出することについて管理規約に明示し、③先行して工事を行ったものへの補償の有無に留意するといった内容が示されました。 なお、長期修繕計画に盛り込む場合でも、「その範囲は共用部分と構造上一体となった部分及び共用部分の管理上影響を及ぼす部分(いわゆる横引き配管など)に留め、これに連結された室内設備類は区分所有者の負担とすることが相当」としています。-2 -

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