大規模修繕工事新聞21年10月号(No.142)
8/61

 全国建物調査診断センターでは現在、コロナ以前から社会問題化している分譲マンションの管理と修繕の本質的な原因と解決策について、新しい観点から議論を重ね、「中規模修繕・分散方式」工事を提案しています。「中規模修繕・分散方式」は、大規模修繕工事の項目を分散し、適時適切に実施しようとするものです。では具体的にはどうするのか―全国建物調査診断センターの菅純一郎理事が解説します。1.分譲マンション修繕を取り巻く問題の本質 そもそも大規模修繕工事は何のために実施するのでしょうか。 「資産価値を維持するため」「建物の機能の維持をするため」といった回答をいただくケースが多くありますが、みなさんがお住まいのマンションに長く快適に過ごすための手法のひとつなのではないですか? 「建物がきれいになり続けること」と「住んでいる人の負担」―そのバランスって、すごく大事だと思います。 建物がきれいだということは当然大事ですが、住み続ける人たちにとって大きな負担に感じるようなものであれば、それは意味ないものではないのかと思います。 長期修繕計画上の大規模修繕工事を12、13年くらいでやっていくということが、なんとなく通例になっていますけども、例えば私がコロナ前、呼ばれて行ったマンションでは、だいたいの人たちは「どうしましょう、おカネ足りません」と話していました。 今どきの大規模修繕工事の材料や技術は、12、13年くらいで工事をやらなければいけない状況は、まあないはずです。 長期修繕計画上の修繕は、大きなスタンスで考えると、「予防保全」という考え方に基づいて提示されています。それが管話だと思います。 そもそも大規模修繕工事項目の場合、実害がない限りは予防保全でやる必要性というものは、ほとんどありません。やらないことで大切な修繕積立金をある程度確保し続けることも可能になります。 長期修繕計画についての考え方をある程度自分たちのマンションに合わせた形、そのスタイルでやっていく必要があるというのが、ひとつの柱です。全国建物調査診断センター  理事 菅 純一郎 ・一級建築施工管理技士 ・一級管工事施工管理技士 ・ビルディングドクター ・公認ホームインスペクター-8 -

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る