大規模修繕工事新聞21年10月号(No.142)
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■注意ポイントの解説①鉄筋コンクリート表面はどうなってる? 築30年以上の建物は、躯体コンクリートの表面に塗装等の仕上げの下地としてモルタル(セメント、砂、水を混ぜた下地調整材)が20 ~ 30㎜程度塗られていることがあります。新築時の竣工図面で確認することが可能です。 最近の新築の施工では、施工費の低減と工期短縮のため、躯体コンクリート面を直に塗装等の下地し、段差ンクリート打放し」と記載されています。方法を選択してしまうので注意が必要です。 鉄筋コンクリート(RC)造の法定耐用年数は47年と定められています。耐用年数は減価償却の計算に使われる年数であり、実際の建物の寿命とは異なります。維持管理の方法によっても、その寿命は大きく変わってくることは周知のとおりです。 ただし、進行速度の差こそあれ、劣化のメカニズムは変わらないといえます。では2回目、3回目の大規模修繕で検討が必要な工事にはどのようなものがあるでしょうか? 大規模修繕工事を手がける㈱ヨコソー東京支店一級建築士事務所の小野寺健所長に、特に留意すべきポイントを6回に分けて解説してもらいます。今回は第1回として、「不具合個所がモルタル層の裏側に隠れている」をテーマにお届けします。■コンクリートの中性化、塩害事例 築年数が経過したマンションは、アルカリ性を保って鉄筋を保護しているコンクリートが、炭酸ガスとの反応によって中性化していきます。 中性化自体はコンクリートの強度に影響しないと言われていますが、アルカリ被覆を失った鉄筋は、ひび割れ等から浸入した炭酸ガス、水により錆が発生しやすい状況に晒されます。 特に海に近い塩害地域では、塩の影響により錆の進行を助長し、鉄筋曝裂を多く発生させます。その進行は定期的に修繕工事を実施していたか、そうでないかで大きな違いがあります。コンクリートとの中性化の進行を防ぐためには、定期的な塗装や防水の塗り重ねが必要になります。 古いマンションでは、不具合個所がモルタル層の裏側に隠れており、鉄筋曝裂を打検調査にて「浮き」と判断し、間違った補修方法を選択してしまうので注意が必要です。-4 -

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