大規模修繕工事新聞21年10月号(No.142)
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ということです。内部の廊下や階段など、色は違っても仕上げ材は同じです。 実際、2番館と3番館の内部階段の部材は違いますが、外観は同じです。○基本的な考え方4「設備項目」 設備改修は非常に大きな金額を占めます。したがって、電気・給排水などの大きな項目の中に、それぞれうまく設備項目を入れておいて、忘れないようにしておく。この設備の項目は我々だけでは難しいことが多いので、管理会社の人たちと一緒に作り上げていく。これは忘れてはならないことだと思います。○基本的な考え方5「調査診断、コンサルタント費用」 調査診断費用、コンサルタント費用を修繕計画の中に入れておく。国土交通省の資料にもそう書いてあります。建物の調査・診断は大事な項目なので、独立した項目を立てて、修繕計画に入れておくことが大事です。 築30年目に大規模修繕工事を予定していれば、その数年前から調査診断費用を積み立てておく。コンサルタント会社、設計事務所などに相談して、だいたいの費用を組み入れておくことが大事ではないかなと思います。当然、オラリオンサイトではその調査診断費用は独立した項目で作っています。○基本的な考え方6「毎年5カ年計画も作る」 長期修繕計画に則って、毎年5カ年計画を作る。長期修繕計画は作りっぱなしではなく、毎年5カ年計画も作って、長期修繕計画の予算と比べ、どこがどう変わっているのか検討します。 オラリオンサイトでは、長期修繕計画と、この5カ年計画の2本立てで維持管理を行っています。5カ年計画のときには、必ず収支決算をして、昨年の予定でいくら、長期修繕計画と比べていくら、そういうものも作って、いつも比較しています。 長期修繕計画は1期から今、19期のものになりますが、前年の支出はいくらで、計画した予算がいくらで、今年の支出がいくらというのを全戸にお知らせしています。○基本的な考え方7「小修繕という項目を設定」 小修繕という項目を設定しています。これがかなり大事だと思います。 いくら計画を立ててもその通りに建物が劣化したり、不具合が生じたりするわけではありません。先延ばし、場合によっては前倒しで修繕をするといったこともあります。 オラリオンサイトで行っている①毎年行う修繕工事、②5年ごとに直す修繕工事で見直しするとき、そこに小修繕という項目を新たに作って、何でも入れてしまいます。そうすると使い勝手もよいし、実査に楽でもあるんですね。○基本的な考え方8「長期修繕積立金検討委員会の設置」 オラリオンサイトの大規模修繕実行委員会ではいくらかかるか佐藤理事:非常に具体的かつ実践的なお話をいただき、ありがとうございました。 大規模修繕工事を10数年に一回やればいいのだと、もうそれだけで修繕工事というものは終わりなのだと思っている管理組合の方も少なくないのではないかと思いますが、実際には5年ごと、あるいは毎年そうしたものの計画を緻密に行っていく。その契約に狂いが出てくれば修正して資金とのすり合わせをとっていく。こういう考え方が大事なのですね。 また、工事をするにしてもすぐにはしないという基準作りも重要です。理事が変わるたびに対策も変える管理組合がよくあります。一貫性がないために修繕積立金が有効に使われず、肝心なときに修繕費用が足りないという相談もあります。 オラリオンサイトでは、原則すぐには直さない、ためてから直す。見栄えだけでは直さない。生活に差し支える安全が基準になっている。こうした考え方がしっかりしていて、理事が変わったとしても、一貫して保たれているというところが大きな特徴ではないかなと思いました。青木委員長:今、1から8まで基本的な考え方をお話しましたが、実は、工事に向き合うために、さらに大事な3つの原則がオラリオンサイトにはあるんです。◆つづきは全建情報図書館で! 全建情報図書館では、セミナーの内容等を収録した書籍を発行しています(全29冊:2021年8月現在)  https://z-book.jp『中規模修繕・分散方式30年周期への挑戦』1. 建物の紹介と、これまでの維持管理2. 30年周期へのキッカケは?3. 基本計画の立て方、8つの基本4. 工事として大事な三つの原則5. 調査診断が重要6. 委員会の組織構成、活動頻度7. 三つの変化と一つの継続A5判・32ページ発行日/ 2021年9月1日の見直しをする毎年、5カ年計画で、中長期的にどれだけお金が必要であるのかということがわかります。 その必要なお金集めを行っているのが、長期修繕積立金検討委員会です。大規模修繕実行委員会が作った、修繕・補修費のシミュレーションに対して、いくら集めていくかを検討する委員会です。大規模修繕実行委員会と長期修繕積立金検討委員会は、車の両輪として認識されています。 長期修繕計画において、大規模修繕実行委員会がいくらかかるとデータ表を作り、毎月5,000円で済んでいた積立金が長期でみれば資金不足になるのがわかるので、「では1,000円値上げ」「2,000円値上げ」などと長期修繕積立金検討委員会が発案、理事会に答申し、総会承認を取るためのの資料作りをするというのが、大きな流れとなっているのです。-3 -

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