大規模修繕工事新聞21年10月号(No.142)
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青木委員長:これまでの修繕工事と維持管理について簡単に説明します。 入居後(築1年目)、タイルの剥がれ、外壁コンクリートに0.3mm以上のひびが散見されたので、施工会社に補修してもらいました。その後、住民アンケートによりベランダの長尺シートの剥がれなどが見つかったので随時対応して直してきました。 基本的には、1年ごとに生活に差し支える程度の不具合の補修、5年周期で鉄部のサビ塗装がありますので、そこを重点的に行っています。 こういうことを繰り返していますので、築19年の今のところ、大きな補修工事は必要ないと考えています。 その他では、テレビ受信装置を4K8K対応へ更新。全戸のインターホン、コミュニティホールなど共用部分の空調機をすべて交換しています。佐藤理事:世間一般では、12年周期で大規模修繕工事を行う風潮がありますが、オラリオンサイトではそれを大きく超えて築30年程度で大規模修繕工事を実施しようという計画をお持ちと聞いています。そういったことを実現しようと思ったきっかけは一体何だったのでしょうか?青木委員長:私はゼネコンにいまして、昔は吹き付けタイルやリシンで仕上げたマンションが多かったのですが、それに比べてこのマンションの外壁はタイルや石が貼ってあり、コンクリートの劣化が遅いのではないかと感じたのが一番はじめのきっかけです。 また、昔の常識はスクラップアンドビルドです。私たちもゼネコンに入社したときに、「壊せ、作りかえろ」「50年持てばよい」と言われてきました。でもその時代は終わったのです。 現在はSDGs(持続可能な開発目標)と言われているように、もう壊して作りかえる時代ではなく、いかに持続させるかという時代に世界中がなっているのです。 そうすると、我々は20年、30年、100年というように建物をみて、コンクリートの劣化を阻んでくれる外装材に重点をおかなければならないと思います。その点、オラリオンサイトの建物は築19年経っても、何ら問題ないと設計コンサルタントの方に言われています。佐藤理事:それでは次に、大規模修繕工事30年周期という修繕工事のサイクルの説明や内容について少し詳しく教えてください。青木委員長:30年周期の計画の立て方についていくつかお話します。○基本的な考え方1「4つの工事」 オラリオンサイトでは①毎年行う修繕工事、②5年ごとに直す修繕工事、③屋上防水工事、④30年目の大規模修繕工事の4つの工事を基本的な考え方の1としています。 危険な個所が見つかったら直す、危険でなければ直さない。見栄えが悪いだけでは直しません。すぐに直す必要がなければ5年ためておいて、まとめて直します。 屋上防水は20年目に直す。オラリオンサイトでは時々の部分補修はしてきました。それを繰り返していけば、30年目の大規模修繕工事の時に一緒に行えるかなと考えています。 以上の繰り返しで、我々ははじめか30年目の大規模修繕工事で計画しています。○基本的な考え方2「項目だけは入れておく」 国土交通省のマニュアルにもありますが、将来行うべき修繕項目や更新・交換の項目をすべて計画書に入れておくことです。 例えば、玄関ドアやサッシの取り替えは45年から50年目に行うケースが多いですが、推定修繕工事費を計上していない長期修繕計画はたくさんあります。工事費用は入れなくても、項目だけは入れておく。入れておいて、将来金額を入れるようにしています。 気づいたことはとにかく全部網羅しておくことが大事なのだと思います。○基本的な考え方3「統一感が大事」 オラリオンサイトは4棟が住居棟、1棟が共用棟です。したがって4棟は同じようにみえます。これが大事です。統一感が大事だ 一般社団法人全国建物調査診断センター(全建センター)が8月29日、You Tubeで公開した第53回管理組合セミナーの模様を紙上採録します。今回は神奈川・相模原のオラリオンサイト管理組合の青木正和大規模修繕実行委員長にお話をうかがいました。オラリオンサイトでは築30年で大規模修繕工事を実施しようと計画しています。一体なぜそんなことが可能になるのか。全国建物調査診断センターの佐藤成幸筆頭理事が聞き手となり、オラリオンサイトの秘密を導き出しました。<構成:編集部>  講演内容はYou Tubeにより動画配信を行っています。また、全建情報図書館で、セミナーの内容等を収録した書籍を発行しています。-2 -

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