大規模修繕工事新聞23年10月号(No.166)
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 「保険事故探してこい」 「売り上げに結びつけろよ」 国土交通省は不動産・建設経済局参事官名で9月4日、マンション管理適正化法に基づき、全国のマンション管理業者119社に対し令和4年度一斉立入検査を実施した結果、24社に是正指導を行ったと発表しました。 今回の立ち入り検査は、マンション管理業者の登録数1,843社(令和4年度末現在)のうち119社(昨年度84社)に対して実施。是正指導した合計(重複該当あり)の割合は20.2%で、昨年度(22.6%) 「会社の管理不足が原因ですが、具体的な話は差し控えたい」 元従業員が管理組合の財産を着服し、国土交通省から監督処分を受けた管理会社が業界紙の取材に答えた発言です。 「お相手に関連することなのでお伝えできない」「詳細についてはお話できない」―管理会社の対応は、このように事実を公にしない言葉で終始していました。 元従業員とは40代のフロントマン、中途入社の社員A氏。事件のひとつは、1人の区分所有者から管理費等を預かり、それを管理組合の口座に入金せず、着服したものです。 次に、大規模修繕工事において、A氏が管理組合を通さずに契約書に押印。印鑑の保管場所を知っているA氏が工事会社と勝手に契約行為を行いました。 もうひとつは、漏水事故の保険申請忘れ。このミスを言い出せなかったA氏は管理組合にも上司にも報告せず、保険で処理したかのようにごまかし…。 事件発覚後、着服金はA氏がそのまま持っていたのですぐに返却。工事契約については管理組合側が「適切な工事なら訴えない」とし、保険申請についても管理会社が示談を申し出たことなどから、管理組合と和解ができました。 管理会社は国土交通省の処分を受け、「内部統制の強化を図り、再発防止に全力で取り組む」とし、社員の再教育を開始。A氏は「心身症」を理由に自主退職しました。◇との比較では2.4ポイント、過去5年間の平均(35.5%)との比較では15.3ポイント下回りました。 国土交通省ではマンション管理業協会に対し、「今回の立入検査の結果を踏まえ、今後も、引き続き、立入検査等による指導を行い、悪質な適正化法違反に対しては、適正化法に基づき、厳正かつ適正に対処して参る所存である」とし、マンション管理業全般の適正化に向けた指導等を図るよう要請を行っています。 一見、事件はA氏個人の単独行動と責任に尽き、管理会社も被害者かのように受け止められます。 しかし、ある業界関係者は「問題をA氏個人に押し付けただけでは?」と違和感を口にします。「やったことは問題だけど、A氏も追い詰められていたんでしょう」。 今回の監督処分では、その他にも複数の管理組合に対して重要事項説明の未実施・書面の未交付、会計収支書面の管理者等へ未交付などが指摘されています。 A氏は管理業務主任者の資格を持っていません。主任者である直の上司の名義で、現場に行かされ、業績アップの圧力をかけられ…。◇ 前述の業界関係者によると、こうしたパワハラ的な言動は管理業界では珍しくないといいます。管理組合を置き去りに、とにかく数字を上げるためには工事を取らなければならない…。 「保険事故が出ると上司が喜ぶ」。それが管理会社の本音だとも。 A氏は医師から適用障害の診断を受けていました。そして、会社の圧力から逃げるように辞めていったのでした。「-9 -

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