大規模修繕工事新聞23年10月号(No.166)
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再発防止に向けた主な対応  国土交通省住宅局参事官(建築企画担当)エレベーターは突然上昇したのです。 その体は、かごの床面と乗り場の出入口の上の枠、その間に挟まれました。40分、750kgの重量が息子の体にかかり続けたのです。 突然起きた戸開走行事故。扉が開いたまま突然上昇した事故。たまたま偶然だよ、運が悪いんだよ、といった関係者がいました。 しかし、そうではありませんでした。 保守点検業者が制御のマニュアルを持っていず、保守ポイントも知らず、保守点検報告書には保守点検の問題や対策、ブレーキの状態がわかる数字・写真・データ・記載がない。これらの状況の中で、この息子の事故が起きたのです。 事故後、再発防止のためにも事故原因を調査する事故調査機関の必要性を訴えながら、様々な団体とともに消費者庁の設置運動に加わりました。 そして、やっとのことで消費者庁に消費者安全調査委員会が設置された2012年、金沢市でエレベーター戸開走行による死亡事故が発生しました。扉を開いたまま突然上昇したエレベーターの床面と上空口に、乗り込もうとしていた被害者の体が挟まれ亡くなったのです。 息子と同じような事故を二度と繰り返さないでと、46万人の署名を集め、既設エレベーターの危険を訴え続けてきた中での事故でした。 私たちは16歳の命から見えた利用者の安全、その安全を軽視することはできないのです。命の問題だと思っています。 いつものように乗り、目的階に止まり、扉が開き降り始めている最中に、扉が開いたまま突然上昇したら、皆様はどうしますか?逃げられると思うでしょうか。 16歳の命が伝えているもの」16歳の命が伝えているもの」   赤とんぼの会代表赤とんぼの会代表  エレベーター事故被害者遺族 市川正子氏  エレベーター事故被害者遺族 市川正子氏 国土交通省はエレベーターのある民間建築物の所有者・管理者、マンション管理組合等を対象に「昇降機の維持管理指針及び地震対策等に関する説明会」を、8月29日の東京会場を皮切りに12月8日の長崎会場まで全国6カ所で開催しています。 エレベーターの適切な維持管理指針等の周知を目的とした説明会ですが、ここでは2006年、東京・港区で発生したシティハイツ竹芝エレベーター事故を中心に取り上げます。 なお、2009年には戸開走行保護装置、地震時管制運転装置の設置等が義務付けられています。-12 -

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