大規模修繕工事新聞22年12月号(No.156)
3/61

  コストダウンの工夫工事もやり方によっては工事費を下げることが可能になります。 ◇ 私たちが建物調査でお伺いしているときに水が噴き出し、緊急的に補修を行ったことがありました。一般の居住者の方がこのような場面に遭遇したらパニックになってしまうのではないかと思います。 以上のように、マンション設備改修は普段見えないところに配管されていることが多く、劣化や腐食の進行状況がわかりにくいというのが給排水管老朽化の特徴です。古いマンションだと、写真のように開放廊下に面した手すりが、アルミで囲むようにずっとできているところがあります。 専有部分の給排水管改修工事では、何かと細かい部材を使用することがあります。また、開放廊下での段取り作業も多いため、手元が滑り、誤って開放廊下のアルミ手すりの隙間から部材等を落下しないような配慮を行います。 事故の原因にもなるため、「絶対に下に落とさない」くらいの養生を行う会社もありますが、開放廊下手すり養生費などという項目はありませんから、見積書ではわからない内容になります。 下の階で共用部配管を切断して、上の階は生活しているという作業環境もあります。切断中の排水立て管で上階から排水されても受け止める仕組みを作ることもあります。この辺も工事会社によって大きく異なり ますが、見積もりに反映されないので、評価しにくい項目となります。 その他、トイレの汚水管、台所の雑排水管を配管する際にも配慮は欠かせません。 新築の場合は、きれいなコンクリートの床に新しい壁、新しい管材で職人は工事を行います。まったく汚いというものがありませんが、改修工事の場合は、排水が漏れている状態で施工しなければいけないという難しさがあります。 使ったばかりの、漏れている管材を切断して運んだりしますけれど、配管の中に汚れ・スケールがこびりついているわけですから、運ぶ際も汚泥が漏れないようにガムテープできちっと養生してから運ばないと、職人が歩く通路すべてに汚水がついてしまうことになりかねません。 そんなことにならないよう、配慮をすることが改修工事の難しさです。このような古い配管を扱うスキルは見積書の中に入っていません。■分流から合流方式へ 室内にあるパイプスペースに、雑排水管と汚水管2本あった汚水・雑排水分流方式を、排水用特殊継手を使って2本を1本にまとめる雑排水合流方式に変更します。 こうすると2本分の材料費、2本文の工事費をまとめて1本分に合理化するようなコストダウンの工夫があります。 専有部分の工事では床をはつる工事で、コンクリートを砕く音など、どうしても騒音が発生します。 そうした騒音をなくしていこうと、近年、油圧ジャッキの活用による室内での既存配管撤去方法『油圧ジャッキによる引き抜き工法』が確立されました。 配管を抜いた後にはきれいな穴が残ります。ここに新しい配管を入れていくことで、室内養生時間や既存管撤去時間、入室作業時間が短縮さ-3 - 見積書の高い安いと実際の現場が見えにくいもの 見積書の中では「室内養生費」という項目を立てますが、簡単な養生で済ませる会社、きちっとやる会社とさまざまです。「室内養生費」とあるだけなので、管理組合がヒアリングなどで施工会社と面談する際に、どれくらいのレベルで室内養生してくれるのかということを聞いてみると、その会社の取り組みがわかっていいのではないかと思います。 専有部分内の工事では、一時的に取り外した室内の機器類を開放廊下に仮置きする作業が伴います。 室内機器類にもプライバシーがあります。「この住戸はずいぶん古い洗濯機を使っているなあ」と思われるのも嫌なので、あて布団で包むなどの最低限の配慮をします。この辺も見積金額には表れない部分といえます。

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る