大規模修繕工事新聞22年11月号(No.155)
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   区分所有法制研究会がまとめた研究報告書では、マンションの高経年化、区分所有者の高齢化による区分所有者の不明化、非居住化の進行から、さまざまな問題点が指摘されました。 そして、考えられる区分所有法制の見直しの方向性とその課題の論点整理を進め、提示しています。 大規模修繕工事新聞では、報告書「第2 区分所有建物の管理の円滑化を図る方策」で示された内容を複数回に分けて掲載します。 現在の区分所有法で決議を成立させるためには、(A)の多数決割合の必要があるところ、集会に出席せず議決権を行使しない者(D)と所在等不明区分所有者(E)は、決議において反対した者(B)と同様に扱われることになっている。老朽化マンションが増加していくにつれ、所在等不明の区分所有者の割合が増えて意思決定が困難になっていくおそれがあるため、集会の決議の母数から除外する仕組みを検討する必要がある。 もっとも、区分所有者保護の観点からすれば、安易に所在等不明であると認定して区分所有者を決議の母数から除外することは適当ではない。また、鋭い対立のある議案について決議を行う際には、深刻な紛争が生じかねない。 そこで公的機関の関与の下で、所在等不明の区分所有者を集会の決議の母数から除外する仕組みの創設を提案している。区分所有者の高齢化や非居住化(賃貸・空き住戸化)が進行すると、集会の運営や決議が困難になる、集会への出席率が下がるなど、合意形成の困難さが増大する傾向にある。 そこで集会に出席もせず議決権も行使しない区分所有者について、一般に決議の意思決定を他の区分所有者に委ねていると評価することができるため、決議から除外しても許容されると考えられる。 さまざまな事情をかかえる区分所有者が出席を強制させられかねないなどの慎重論も踏まえ、出席者の多数決による決議を可能とする仕組みの創設を提案している。 現行法では、専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は議決権を行使すべき者1人を定めなければならないとされている。区分所有者の数を算定する際には専有部分の共有者全員で1人と取り扱われることを前提に、議決権行使者を定めるものとしたものである。 ただし、区分所有権の処分を伴う建替え決議等において議決権行使者を定める場合には事案によって全員同意を必要と解釈する余地があるため、持分の価格の過半数の決定をもって議決権行使者を指定することができる旨の規律を設けることが考えられる。 区分所有者が事前に書面等により議決権を行使したが、その後、集会に参加して、事前に行使したものと異なる内容の議決権を行使したときには、事前に書面等によって行使された議決権は撤回されたものとして扱われる。建替え決議においても同様である。 事前に書面等により賛成の議決権を行使した者であっても、集会における議論の状況を踏まえて反対に転ずることは許されるべきと考えられ、議決権の撤回を制限することについては、慎重に検討を行う必要がある。⑴所在等不明区分所有者を決議の母数から除外する仕組み⑵出席者の多数決による決議を可能とする仕組み⑶専有部分の共有者による議決権行使の在り方⑷建替え決議等における事前の議決権行使の撤回の制限の仕組み-9 -

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