大規模修繕工事新聞22年11月号(No.155)
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◆工事費の原因はなくなるか①石油等のエネルギー価格 石油等のエネルギー価格の上昇はこの先なくなるでしょうか? 現時点(2022年8月時点)ではロシアによるウクライナ侵攻は長期化が予想されており、短期的にみて、建設資材の高騰の原因である経済制裁も緩和される見通しがありません。 このため、エネルギー価格は今後も上昇または現状維持を望めるかといったところだと思います。②円安基調 次に金利政策の変更がなされ、為替レートの円安基調が変わるでしょうか? 輸入品の価格が下がる要素としての円安ですが、日本国内におけるさまざまな債権に関わる事情や景気側面等からみても当面の金利政策の変更は見込めないだろうと考えられます。③建設作業従事者の増加 それでは建設作業に従事する就労者が短期間に増加するでしょうか? 若年層の就労者が急激に増加することなどはありえません。慢性的な労務不足は、国土交通省でもいかに改善するかは十数年のトレンド、喫緊の課題で、いろいろな手を打ち続けてきています。それでも改善策は見込めていません。 外国人技能実習生に関しては新型コロナの終焉があったとしても、他のアジア各国の経済成長に伴って、日本だけに人材が流れてくる傾向にはならないだろうと考えられます。◇ 当面は、この状態が常態化し、高止まりで安定するのか? ということになりますが、私からはあえて、それも無理=×であろうと見通しを立てさせていただきました。 特にマンション改修工事市場では、実際はさらに高騰する要因があると考えられます。 こうしたことが常態化、蔓延化するとどのようなことが起こるかというと、元請けとしては工期が定められているので何とかしようとして、とにかく人をかき集めようとします。そうすると臨時で集められた人は、今日は何をするんだろう、何をすればいいんですか、という人が集まります。いわゆる技能、技術のない人が寄せ集められるのです。 また、工程が遅れているため急いで作業をさせるので、いわゆる突貫工事というものになる可能性があります。 突貫工事といえば品質が悪い、低下するという話になります。 品質の悪い工事の責任をとれと元請けにいうことはできるかもしれませんが、何より誰が損をしているかというと、金銭に代替えできない、管理組合のデメリットとなるのです。 今後は、この管理組合のデメリットが多発するのではないかと考えられます。 施工会社の内的要因において、原材料高騰、技術者不足、技能労働者不足、働き方改革実施があり、これらを反映した見積書を管理組合に提出せざるをえません。このような見積もりに対して、管理組合が拒否したり、一方的なコストダウンの要求をされると、施工会社にとっては負のスパイラルに陥るという現象になっていくことになります。 週休2日制もままならない3Kの現場でだれが働きたいでしょうか。金銭的な待遇もよくない職場は将来的にも発展のない業界になります。 建設業界はやがて持続困難な業界として縮小して消滅していくという危険性もはらんでいるといえます。 とはいえ、マンションストックは増大する一方です。マンション改修の業界が縮小すれば、工事をやりたいと計画したときに工事ができないという事態になると想定されます。酷暑でエアコンを取り付けたいけど職人が不足しているから取り付け作業は3カ月先だよ、と。そういう現実がマンションの修繕工事の現場でも起こってくるかもしれないのです。 大規模修繕工事を計画しても1年先だ、2年先だということが普通に起こってくるかもしれません。そうなると皆様の資産の保全や住環境の維持についての危機を引き起こしかねないということになるわけです。 結局は管理組合のデメリットが増大しているということにつながるのです。◇ では将来のために何をなすべきなのでしょうか。管理組合としては、世間の風潮に流されず、しっかりとした正しい情報分析のもと、値上がりした工事に対して、まずは理解を示していただきたいと思います。 それが、持続可能なマンション改修工事の市場の育成につながっていくことになるのです。-5 - 提言/大規模修繕工事を持続するために◆マンション改修業界の将来を考える 入札から契約、工事着手までの期間に原材料や労務費が高騰したため、元請けの施工会社が工事の最初からまたは途中で赤字になるという話を聞きます。 工事がはじまってから、工程どおりに必要とされる作業員が集まらず、予定した作業が同じペースで進められないということが起きています。 そのようなものは請け負った者の責任でなんとかしろ、というは当たり前です。契約上もその責任はあります。ここでは、その当たり前だという話を進めたいわけではなく、現実はどういうことになるのかという話です。 すなわち、5人集めたかったところが3人だったり、当日人がまったく集まらない現場ができつつあります。

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