大規模修繕工事新聞22年7月号(No.151)
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う目でみられる」と嘆く経営者は少なくありません。 アベノミクスなども含め、日本ではこれまで数々の経済政策が実施されたが、結果として過去30年間のわが国の経済成長は主要先進国の中で最低レベルと言われています。実際は、初任給は30年前とあまり変わらず、国際的には人件費でみて「安い日本」となっているようです。 昨年10月の最低賃金改定(約3%引き上げ)は過去最高の引き上げ額となりました。政府が6月7日に閣議決定した骨太方針2022では、全国加重平均1,000円の早期実現を目指しています。 帝国データバンクに行った2022年度の賃金動向に関する企業の意識調査(調査期間:2022年1月18日~ 31日、有効回答企業数:11,981社)によると、賃金改善が「ある」と答えた企業(6,547社:54.6%)の主な理由は「労働力の定着・確保」が最も多くありました(2022年度見込み)。 賃金を改善する理由で最も多かった回答は、「労働力の定着・確保」が76.6%でした。建築業界において、人手不足―特に下請け会社、職人は高齢化が進み、若い労働力の確保は深刻です。 このため、賃金改善で人材確保に対応したいと答える会社は多くあると言えますが、賃金改善を「ない」と回答した企業(2,339社:19.5%)の主な理由は「自社の業績低迷」が64.7%で圧倒していました。 賃金改善による人手不足解消を検討するよりも、人件費を上げることが業績低迷の懸念材料と判断する会社があるということです。 一方、期待される外国人労働者の雇用にも受け入れ体制等に大きな経費がかかるといいます。「生活支援、労働災害防止のための日本語教育なども必要」「それでも管理組合からは外国人労働者を安く雇っているとい賃金改善による人材確保も業績低迷の懸念材料に工事費への反映は来春以降?コスト競争は工事の品質に影響する 以上のように必要経費が値上がりしている現実は当然、大規模修繕工事等の全体工事費に影響を及ぼします。 すでに工事契約をしている今秋、または来春の大規模修繕工事については、契約にある通りの工事請負金額で実行されます。 ただし、これから工事契約を行おうとする来春以降の物件に対しては、原材料の値上げや人件費の高騰は全体工事費に跳ね返ってくることは否めません。 これに対し、管理組合側があくまでコスト競争で施工会社選定を行うことは、結果的に工事の品質に影響することを承知しておく必要があるといえるでしょう。つまり、管理組合として墓穴を掘ることにつながりかねないのです。 「今までのような値下げ交渉ではよい工事はできない」という理解を、管理組合側がもっと深める必要があるといえるのではないでしょうか。-3 -

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