大規模修繕工事新聞22年7月号(No.151)
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NPO法人日本住宅管理組合協議会/集合住宅管理新聞『アメニティ』2022年6月5日付第477号「論談」より 知床の観光船の運航会社の社長は、運行管理者として「3年以上の実務経験がある」と届けていたが「船舶免許は持っていなかった」など、多くのいい加減な運営が明らかになっている。 海上運送法施行規則は、運航管理者の要件として「船長として3年または甲板部の職員として5年以上乗り組んだ経験」「運航の管理に関して3年以上の実務の経験」を有する者であることなどを定めている。 当初、社長は船長が運航管理者だと説明し、「運航について社員に任せている部分が多かった」としていた。◇事故を未然に防ぐために 「ハインリッヒの法則」は、労働災害の分野で知られ、事故の発生についての経験則でアメリカのハインリッヒ氏が明らかにした。 1件の重大事故の背後には、重大事故に至らなかった29年の軽微な事故が隠れており、さらにその背後には事故寸前だった300件の異常、ヒヤリとしたりハッとしたりする危険な状態が隠れているというもので、世界中で災害防止の基本となり、現在に至るまで多くの労働現場で事故への注意喚起に活用されている。 この法則が示す教訓は、大事故を未然に防ぐためには、日ごろから不注意・不安全な行動による小さなミス、ヒヤリハットが起きないようにすることが重要であり、ヒヤリハットなどの情報を素早く把握し、的確な対策を講じることが大切であるとし、建設、運輸、医療など、わずかなミスで大事故が起きる可能性がある業種で普及している。ハインリッヒの法則を知る~知床観光船の教訓~-14 - ◇ 乗客の命を軽視した知床観光船◇管理組合でも活用できる 現在ではオフィスワーク分野でも活用されており、「経営危機を招くようなコンプライアンス違反の1件の重大事案の背後には、不祥事の芽となる多数のヒヤリハットが隠れている」「顧客から1件のクレームが寄せられたなら、背後には同様の不満を持っている多数の顧客が存在している」などが考えられる。 ハインリッヒの法則の教訓を知り、活用することは、どのような職場でも、もちろん管理組合においても有効である。 さらに、大規模修繕工事において職人等の落下事故を起こさない、起こさせないためにも自己の芽を摘みたい。 それらの報告と対策を管理組合と施工会社が共有し、人の命を大切にする取り組みを行いたい。(NPO日住協論説委員会)

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